世界的なヘッドハンティング会社であるエゴンゼンダーの元パートナーが書いた本。
個人的にはめちゃくちゃ良い本なのだが、HRに知見や関心のない方が読んでも、本書の魅力を理解できないかも。
以下、自分用のメモ。
エゴンゼンダーがハーバード大学などと共同でリサーチし、2014年に公表したコンセプトが「ポテンシャル・モデル」である。
コンピテンシーが過去にフォーカスし過ぎているのに対して、ポテンシャル・モデルは未来の伸びしろに着眼する。
ポテンシャル・モデルの開発を指揮したクラウディオは、人の器の大きさ・伸びしろを以下の4つの因子で測れるとする。また、各因子には2つずつのサブセットが存在する。
- 好奇心(Curiosity):赤色/新しい経験、知識、率直なフィードバックを求めるエネルギーの強さと、学習と変化への開放性
- 吸収:「とにかく知りたい」「何でも吸収したい」という方向の好奇心
- 更新:古い考え方をサッと捨てられる好奇心
- 洞察力(Insight):青色/新しい可能性を示唆する情報を収集し、理解するエネルギーの強さ
- 集める:さまざまな情報を集め、整理し、意味を理解することにワクワクするタイプ
- つなげる:①Data ②意味を持つ情報(Information) ③つながりを示す知識(Knowledge) ④離れたものの共通項を見出す洞察(Insight) ⑤共通項をつなげる筋を見出す叡智(Wisdom)
- 共鳴力(Engagement):黄色/感情と論理を使って、自身の想いや説得力のあるビジョンを伝え、人々とつながろうとするエネルギーの強さ
- 結ぶ:相手とのつながりを押さえながら自らのビジョンやアイデアを伝え、そこから新たな物語が展開されたりすることに喜びを感じる
- 響く:音と音の共振のごとく、エネルギーの交換を無意識に求めるタイプ
- 胆力(Determiation):黒色/大きなチャレンジがある課題を好み、困難な目標に向かって戦うことに強いエネルギーを得て、逆境から素早く立ち直る力を持つこと
- 腹決め:迷いがありながらも、それらをすっぱり断ち切って、覚悟を決める。腹をくくる。
- 律する:「自分なら絶対できる」と信じる反面、「自分はまだまだ」と考え、その壁を越えていくチャレンジにエネルギーの高まりを感じる
重要なのは、ここで見るべきは「能力」ではなく「エネルギー」だということ。ここでのエネルギーとは、元気で声が大きい、気合が入っているなどの「出力」を指すものではなく、本人からすると無自覚で、時に無自覚に、自然と湧き起こる「熱量」のようなものだとされている。
地下1階のコンピテンシー、地下2階のポテンシャル・モデルに加え、著者はさらに地下3階のソース・オブ・エナジー(エネルギーの源泉)を提唱する。ソース・オブ・エナジーは言い換えると精神性である。ヒリヒリするような頑張りを生む力であり、使命感(ミッション)や劣等感(コンプレックス)として表現される。
この地下2階と地下3階の考え方は、コンピテンシーでは表現できないエネルギーをまさに言い当てており、初めて本書を読んだときは電流が走った。
そうか、コンピテンシーでは見えない、器の大きさのようなもの、目の前にして痺れるようなもの、一部の同僚にどうしても感じられない物足りなさの正体はこれであると。
真の意味でHRに関心のある方は、読んで損のない本だと思う。