PwCコンサルティング合同会社『デジタルチャンピオン 変化適応と新価値創造のための思考とその戦略』

PwCは、世界が直面する喫緊の課題を「ADAPT」として警鐘を鳴らしてきたそうだ。

  • Asymmetry(貧富の差の拡大と中間層の衰退)
  • Disruption(テクノロジーの広がりやすさとそれが個人、社会、気候に与える影響)
  • Age(ビジネス、社会制度、経済への人口動態圧力)
  • Polarisation(世界的なコンセンサスの崩壊や分断、ナショナリズムやポピュリズムの台頭)
  • Trust(社会を支える諸機関への信頼低下)

本書では、これらADAPTについて解説した本……と思いきや、DXを再定義した本ということのようだ。

これからのトランスフォーメーションとは、企業を取り巻く競争環境への適応に加え、パンデミック、地政学リスク、気候変動や災害などの突発的なゲームチェンジに対応する恒常的な変革・進化力を保持することだと考えている。そのためデジタル化にはどのようなものがあるのかという現時点の答えより、継続的に変化・進化するために最初に持つべき考え方の基本的な枠組みと、具現化するための加速化策にこだわったのである。

なんか凄くチグハグだな。

DXに取り組む際、確かにナショナリズムやポピュリズムの台頭に備えようとはしていない。社会を支える諸機関への信頼低下問題に対しても同様だ。しかしそれで良いだろう。DXとは各企業が顧客接点をデジタルで変革することを指すことだとわたしは理解している。そこにポピュリズムや国連が入り込む隙間などないように感じる。それは本書の読了後でも同様の感想だ(ただしCOVID-19の対応については当然意識すべきだと思う)。

また冒頭の大所高所が終わって具体的な解説に入ると、「PwCの考えるDX全体像6+2」という枠組みが出てくる。

  1. デジタル戦略
  2. 事業構造(バリューチェーン)
  3. 経営基盤(経営管理/コーポレート機能)
  4. ITプラットフォーム
  5. 人材・組織・カルチャー
  6. デジタル型新規事業
  7. 政策/規制
  8. 産業(横断)/エコシステム

これ自体は一定の納得感がある。しかし最初の6つと付け足された2つの格差が酷く、だからこそ冒頭で感じたチグハグ感が更に強調されている。