インキュベ日記

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『ライフイズストレンジ』

ライフ イズ ストレンジ - PS4

ライフ イズ ストレンジ - PS4

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
  • 発売日: 2016/03/03
  • メディア: Video Game
「アドベンチャーゲーム」と呼ばれるジャンルがある。

文字や映像・音声などで何かしらの物語が展開されていき、選択肢によってストーリーが変わっていったり、あるいは画面上で謎解きなどをしたりしていくゲームである。

批判もされるが、要するにイラストや映像・音がついて選択肢のある紙芝居である。

わたしと同世代(1978年生まれ)以上の方なら、選択肢によって読むところが変わる「ゲームブック」と呼ばれるものを覚えているかもしれないが、それをゲームというメディアで実装したという言い方もできる。

わたしがプレイしたものに限って書くが、日本では元々『弟切草』『かまいたちの夜』というチュンソフトのホラーゲームで脚光を浴び、その後、『街』やその続編『428 〜封鎖された渋谷で〜』でも人気を博した。『逆転裁判』シリーズもけっこう売れたかな。最近なら『STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)』に代表される空想科学ADVシリーズもあって、特にシュタゲは社会現象とまでは言わないまでも一般に秋葉原のオタク文化を広める意味でも凄くエポックメイキングな作品と言って良いだろう。また、ゲーム好きなら、極限脱出シリーズ『9時間9人9の扉』『善人シボウデス』『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』や、『街』『428 〜封鎖された渋谷で〜』を作ったスタッフによる『タイムトラベラーズ』、『ダンガンロンパ』シリーズなどもプレイしたことがあるかもしれない。

……と、勢い込んで書いてみたが、実はあまり多くの作品がないジャンルである。もちろん他にもあるが、一般にも知られた作品はこの程度だ(一部例外について以下の余談1・余談2を参照)。

わたしはこのアドベンチャーゲームというジャンルが大好きなので、1年に1〜2回は「面白そうなアドベンチャーゲーム出てないかな」と検索してみるのだが、このジャンルは、わたしのように狙い撃ちで買うコアなファンも多い一方で、既に書いたとおりそこまでパイの大きなジャンルではなく、ニッチなジャンルであることは否めない。また、このジャンル自体、アドベンチャーゲームと言ったり、あるいはテキストアドベンチャー・グラフィックアドベンチャー・ノベルゲーム・サウンドノベル・ビジュアルノベルなどなど、世間的にジャンルの記載が安定しないという問題もある。

そんな中、数年前からちょいちょい話題に上がっているのが、本作『ライフイズストレンジ』である。

主人公はアメリカ・オレゴン州の田舎街アルカディア・ベイに5年ぶりに戻り、ブラックウェル高校に通う女子高生・マックス。写真が好きで、真面目だけど引っ込み思案な、基本的に冴えない生徒である。しかし彼女はある日、学校のトイレで、青い髪の女子が同じ学校に通う男子生徒と口論の末、射殺される場面を目撃してしまう。同時に、気づいたらトイレに向かう前の時間に巻き戻っており、この瞬間、時間を最大数分間だけ巻き戻せるという特殊能力を何故か身に付けてしまう。彼女は今度は非常ベルを鳴らして発泡を阻止し、青い髪の女子を助けるが、彼女は5年ぶりに再開したかつての親友・クロエだった。マックスはこの特殊能力の力を使いながら、6ヶ月前に疾走したクロエの親友・レイチェルをクロエと共に探すことにする……というアウトラインである。

この作品は、「風が吹けば桶屋が儲かる」の学術版、バタフライ・エフェクトをモチーフにしているそうだ。マックスは大小様々な選択を迫られるが、少しだけ時間を巻き戻せる特殊能力を活用することで、短期的には最適と思われる選択肢を選ぶことが可能である。しかし短期的に良かれと思って選んだ選択肢が、長期的に、どこにどんな影響をどの程度もたらすかは当然すぐにはわからない。そして、それがわかる頃には、もう巻き戻す時間の限界を超えてしまっているのである。何しろマックスが巻き戻せるのは数分間だけなのだから。

また、ゲームシステム的にも面白いものがあり、本作にはゲームオーバーがない。選択次第では誰かが死んでしまうようなシリアスな展開も待っているのだが、それも含めて、登場人物の行動や会話が変化し、ストーリーがそのまま続くのである。そしてマックスは大小様々な選択の果てに、クライマックスで非常に大きな「究極の選択」を迫られることになる。誰がやっても、挫折しない限り何らかのエンディングに到達できるという意味では、プレイした感覚は(ゲームでありながら)選択肢のある小説や映画といったニュアンスが近い。そして他のプレイヤーの人が書いているように、一本の青春映画を観終わったような深い余韻がある。このジャンルが「ビジュアルノベル」などと呼ばれる所以であろう。

一言で書けば、大推薦ということに尽きる。ゲーム自体は簡単なので(というか前述のとおりゲームオーバーがない)、普段ゲームをやらない人でも入りやすいと思う。

余談1

昔の、いわゆる18禁のアニメゲームもこのジャンルが多かった。今ではググるとエロ絵やエロ動画なんて山ほど出てくるが、90年代以前はエロい絵そのものがそれなりの希少性を持っており、ちょっとしたゲームをこなすとそのご褒美に登場人物が脱いで何枚かのエロいイラストとちょっとしたエロい音声が出て来る、といったゲームに一定の需要があった。けど何枚かのエロい絵と声優が喘ぐごく短い音声だけでは30分もかからず観終わってしまうため値段分の満足度を得られることは困難で、畢竟、このテキストアドベンチャーという形で時間と満足度を積み増していたそうだ。ただ、これは日本で独自の進化を遂げて、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』や、『雫』『痕』『To Heart』(リーフビジュアルノベルシリーズ)のように、プレーヤーの大感動を生むような傑作を産み出していた、らしい。「らしい」とボカしているのは、実はわたしはアダルトゲームはほとんどやったことがないんだよね。

余談2

このジャンルは、(最近はどうか知らないが)昔のテキストベースだと比較的安価に作成できるので、『月姫』『ひぐらしのなく頃に』『Fate/stay night』などの同人ベースの傑作も生み出されている、らしい。ここでも「らしい」と書いたが、わたしは実際のところコミケに参加したこともないし、まんだらけも20年前に1回だけ行っただけ等、実は同人文化にほとんど馴染みがない。もちろんこれらは相当話題になって商業ベースにも乗ったのだが、極私的にタイミングを逸してしまい、これらの作品は未プレイである。

余談3

Wikipediaによれば、本作はフランスのゲームスタジオが作ったそうだ。モーションキャプチャーを使っているのだろうが、当然ながら言い回しだけでなく表情やジェスチャーも非常に西洋的だ。この辺が、非常に面白いというか憧れるというか何というか。