堀越耕平『僕のヒーローアカデミア』31巻

ヒロアカについては正直、本編よりスピンオフの『ヴィジランテ』の方が面白いと思う派だ。

  • 先人の個性を使えるとかいう主人公にだけ備わったチート能力を貰っているデク
  • 個性を失っただけで空気と成り果てたオールマイト
  • 非常に使い勝手の良い個性を持ちながら、笑っちゃうぐらい狭い視野、低い視座でキャンキャン吠えている爆豪(読者一番人気だっけ)
  • 非常に使い勝手の悪い能力を努力と工夫でチート能力に仕立て上げ、更にその能力を失って尚、ヒーローとして正義を為そうとするルミリオン

デクや爆豪に感情移入しきれない。未熟すぎるのは前提として、身勝手なんだよな、2人とも。どう考えても主人公はルミリオンであるべきだろう。

その他のキャラを見回しても、魅力的なのはヴィラン側だったりする。なら死柄木弔やオール・フォー・ワンが魅力的かと問われると、未だに顔出しもしない上にチートすぎて何の興味も持てないオール・フォー・ワンは当然のこと、死柄木弔もだんだんと主人公感が出てきて、それに呼応するように「つまんない」キャラになった。

作者は主人公サイドを書くのが苦手なのかなー。

でも31巻は――ここからが本題なのだが――久々に心を揺さぶられたなあ。

明らかにヒーローを目指すには資質不足なクラスメイト。学園モノのテイストを守るために読者として興味のない隣のクラスのキャラを無理やり掘り下げて読まされる苦痛。これまで何万人以上の人間がヒーローを目指し、それが叶わなかったほどヒーローはレベルが高いはずなのに、今期の主人公のクラスメートたちだけは、ヒーローじゃないのにプロの戦いに足を踏み入れてそれなりに爪痕を残してしまう不自然さ。個性社会において無資格者が暴力を振るうのはたとえ正義のためでもダメなことで、だからこそヒーローが資格制なのだが、主人公たちの代だけそれがなあなあで許されている不自然さ。他にも、真面目に書くと15個とか20個とか書けてしまうほど、ヒロアカ本編は作品として破綻してしまっている。

しかし31巻はすごい。わたしがヒロアカ本編に感じている不満のいくつかが、かなり乱暴な形でのテコ入れではあるが、解決した気もする。

この後、ヒロアカ最終章になるそうだが、どうなるかな。期待半分、不安半分である。