『SEX EDUCATION(セックス・エデュケーション)』シーズン1, 2@Netflix

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概要

シーズン1と2いずれも8話構成で、全16話。

主人公はごくフツーの真面目な高校生なのだが、母親はテレビ出演や著書もあるセックスセラピストである。家中にセックスアイコン(カーマ・スートラの絵だの古今東西のディルドだの女性器の解説図だの)があり、自宅でのセックスセラピーやセミナーで稼いでいるため、おちおち友達を(親友を除いて)家に呼ぶこともできない。しかも母親は息子に過干渉気味で、おかげで主人公はそのストレスから射精ができなくなってしまっている。主人公は母親にそれを追求されたくなくて、オナニーのフリをするのだが、それすら母親に詮索され、オナニーのフリをしていることについて申し開きをせよと言われる……男子高校生の立場からすると、控え目に言って地獄である。そんな鬱屈系主人公が、色々あって、ヒロインと一緒に、学校の同級生を相手にセックスセラピストで小遣い稼ぎをすることになる――というプロローグ。

プロローグだけでお腹いっぱいの面白さだが、本作が面白いのは、イギリスの少年少女が抱える問題を片っ端から詰め込んで問題提起をしていることだ。避妊、性病、ゲイを取り巻く環境、貧困、ドラッグ、未成年の飲酒、両親の離婚、親子関係、学校サイドの問題……日本のテレビドラマは「過激だ」だの「教育の悪い」だの理由で、ほどほどに取り上げられることは多くとも真正面から取り上げられることは少ないが、その点イギリスは容赦がない。

加えて、制作側が「描いていないこと」から逆説的に炙り出していることもある。

例えば人種問題。このドラマでは、あらゆる人種が全く分け隔てなくグループを作ってコミュニケーションを取っており、「この黒人が!」といった差別語が発せられることは絶対にない。しかし残念ながら現実はそうではないだろう。もちろんアメリカほどではないかもしれないが、イギリスも人種問題はわりに根深いと聞く。黒人差別に限らず、黄色人種たる我々もナチュラルに差別されることがあるとかね。

欧米ではアメリカを中心に、昔から出演者が白人だけだと駄目だとか、先日もアニメだったか、有色人種の登場人物の声を白人が当てるのは駄目みたいな話があったが、本当に馬鹿げた話だ。欧米社会に、有色人種は劣った汚いものだという差別的心情が本能のようにこびりついているから、こういう発想が出てくるんだろうね。これを言い出すと、子供の声は子供、老人の声は老人、教師の声は教師、犯罪者の声は犯罪者、宇宙人の声は宇宙人が当てねばならない。「我々は人種差別にまみれた国だから一時的にこういう措置を取るが、本来的にはどの人物の声を誰が当てようと問題がないと言われるフラットな社会を目指さねばならない」という声明が欧米社会から出されたという話もあまり聞かない。まあこれは書いても切りがないから強引にまとめるが、本作では人種問題に対するデリケートな状況を逆説的に知ることもできるという話。

あと、主人公の親友のエリック、これは非常に魅力的だね。黒人のゲイという非常に難しい役柄だと思うけど、そういうものを全て受け止め昇華している。

補足・視聴者向け

既に観た方に向け、極私的に最も気になるキャラを挙げると、やはりアダムかな。ゲイ差別をして親友のエリックを散々いじめていたアダムが、実は自分はバイ・セクシャルであると気づくあたりがもう最高。