津川友介+勝俣範之+大須賀覚『世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療』

本書の言っていることはシンプルで、保険が適用される治療法(標準治療)が最も優れた治療法である、というその一点である。標準治療はエビデンスも豊富で、治療法も確立している。怪しげな代替療法や、海外でのみ承認された未承認薬や、自由診療や、食事療法では十分な治療は望めないどころか有害ですらあると。それはわかる。凄くよくわかるし、わたしも基本的にはそうしたトンデモを忌避して、科学に準拠したいと思う人間である。

しかしそれでも、親や自分や子供ががんになり、積極的治療は望めませんと言われて、簡単に受け入れられるかと言われると、そんなに簡単な問題ではない。

例えば本書では、緩和ケアも標準治療で、緩和ケアを通じてその人らしい最期を送った人が何人もいると書いてある。しかし自分はともかく、親や子供ががんになり、望むことは何だろうと考えると、その人らしい最期ではない。1日でも長く生きてくれと思うことだろう。自分に対しては延命はしてくれるなと言う一方、親や子供の延命を望む人は多いと聞く。

もうひとつ、統計は過去の問題だし、自分ではない人の問題だ。でも親や自分や子供の命は、統計ではないのである。自分の親にだけは効く代替療法があると信じる人もいるのだろう。

もちろん基本的には本書の内容に同意する。しかし難しい問題だなと思った。