三田誠広『書く前に読もう超明解文学史』

本書は三部作である「ワセダ大学小説教室」シリーズの3冊目になる。「基礎編」「応用編」と続き、最終巻となる本書は、戦後日本を中心とした「文学史」がテーマとなっている。「基礎編」「応用編」のあとが文学史というのは、付け足しみたいでイマイチしっくり来ないなあ。

まずシリーズ全体の感想を最初に書いておけば、これらを読んで小説が書けるようになるかどうかは俺にはわからない。俺は小説を書いたことがないし、文章読本のつもりで本シリーズを買ったため、さしあたり小説を書こうとも思っていないからだ。また、あまり――というかほとんど文章の参考にはならなかった。その点では大いに不満だが、本書では南米文学の神話的手法などがわかりやすく述べられているので、そのあたりは参考になった。

ちなみに、このシリーズで三田誠広は、自著を何十回と自画自賛する上に、村上春樹をライバル視して扱き下ろしている。しかも相当しつこい。それが嫌な人は買わない方が良いかもしれない。ただ、俺はセールス面だけでなく、質的にも村上春樹の方が高いと思う。三田誠広は頭でっかちではあるけれど、ぜんぜん小説が追いついていない。セールスも文壇の評価も大したことがないのには、やはり理由があるのでは? まあ一部の小説は面白いと俺も思うんだけど。