あさりよしとお『なつのロケット』

なつのロケット (Jets comics)

なつのロケット (Jets comics)

教科書をほとんど使わず、テストもしない、「学問は実践してナンボのもんだ」とうそぶく型破りな女教師。小学5年生の主人公・北山泰斗は毎日を大いに楽しむものの、生徒にも保護者にも教師の中にもそういった授業を良く思わない人々は多く、結局、先生は学校を辞めることになる。先生のやり方が間違ってなかったと証明したい少年たちは、世間をアッと言わせるため、授業で実験したペットボトルのロケットなんかではなく、火薬を用いた本物のロケットを打ち上げようと思い立つ――といったプロローグ。
液体燃料と固形燃料のどちらが良いか議論したり、打ち上げの角度や軌道を決める方程式を算数1の小学生が導き出したり、思わず「そんな小学生いるわけねーだろ!」とツッコミを入れてしまう内容だが、それらを差し引いたとしても、夢のある内容であり、また深みのある内容である。
特に、先生の主人公に対する言葉が、深い。

痛い目を見ながら 自分のやりたい事をやるのと…
他人にやらされている事だけをやって それで何かしたと満足するのと…
おまえはどっちだ?

自分のしたい事をします…

はーっはっはっはっは
まァ ああ聞きゃ こう答えるわな
でも たのもしいぜ
ま 今はまだわからないだろうがな…

確かに「やっている」つもりだったけれど実は「やらされている」に過ぎない――なんてこと、実際は往々にしてある。このことがわかる小学生は数少ないだろうが、大人だって実は簡単にはわからないことであろう。いやあ、深い。