村上龍『案外、買い物好き』

案外、買い物好き

案外、買い物好き

村上龍のエッセイ集。男が消耗品だとか日本経済だとか、そういう話は一切出てこない。全編に渡り村上龍の買い物の話だが、その大半は「シャツ」の話である。作家は家やホテルで仕事をするので、ほとんど着る機会もないのに、ブルーのシャツを何十枚・何百枚と持っているらしい。
村上龍は、着る機会のない服を買いまくることが馬鹿馬鹿しいことだとは十二分に認識している。しかし良いシャツを見つけたらつい何枚も買ってしまい、結果、毎朝数十分かけて鏡の前でシャツとネクタイを合わせたりして、そのまま短パンで仕事をするとか、2泊の予定なのに7〜8枚のシャツを持っていき、シャツは着るものではなくて選ぶものだとか言っている。もっとも、最近はカンブリア宮殿が始まったので、シャツを着る機会が増えているようだ。元々テレビ出演は嫌いなのに、シャツを着られることを喜んでいるという、「文学者」らしからぬグダグダ感。
……わかる!
もちろん俺はシャツへの関心はないが、趣味的な「好き」の根源的な気持ちは俺も理解できる。おそらく「好き」ってそういうもので、他人がどうこうより、自分が楽しければ良いのである。