- 作者: 御田寺圭
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2018/11/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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全部で19の時評があるのだが、通底するのは、「かわいそうランキング」という考え方である。今の社会は、人が「かわいそうだと思うもの」には暴力的までの正論を発揮するが、そうでないものには目を向けない、という冷厳なる指摘だ。例えば、パンダやクジラといったかわいそうランキング上位の動物には皆ギャーギャー言うのだが、その一方で、ゴキブリに似たコオロギ、ヘビ、両生類みたいなものが絶滅しようが誰も気にも止めない、と著者は言う。同様に、日本人の男性は家事をしないといったわかりやすいストーリーに包まれたかわいそうランキング上位の自称には皆ギャーギャー言うのだが、そもそも男性と女性の労働時間+家事時間の合計は殆どイコールであるという事実には誰も注意を向けていない。
なるほど、と思った。
はてなーでブン回されている「ポリコレ棒」にも似ているな、と思った。
ポリコレとは「ポリティカルコネクトネス(政治的・社会的な正しさ)」の略である。つまり本来ポリコレで言う「正しさ」とは、「公正・中立・妥当」あたりを意味するはずなのだが、いつの間にかリベラルな人たちが気になるテーマにおいてのみ正論をブン回すという現象が各地で見られている。その「正論」ありきの乱暴なロジックや態度をもって、社会主義国の治安警察が持つ警棒をイメージして「ポリコレ棒」という言葉が生まれたのだとわたしは理解している。
閑話休題。かわいそうランキング上位だけを見る姿勢は、いつかしっぺ返しを食らう、という著者のスタンスは、バランス感覚があって良いと思う。次の本も読んでみたい。