竹田青嗣『自分を知るための哲学入門』

これはかなり売れていると思う。文庫が出たのが93年12月だが、98年で既に第十三刷発行である。増刷されまくり。著者も人気があるし、哲学の入門書の中では最も売れているものではないだろうか?

まるで年表や教科書のように味気なく哲学史を羅列した入門書や、入門書と言いながら哲学の一分野を小難しく説明するような入門書は、やはり「とっつきにくい」と言わざるを得ない。その点、本書には著者の体験や著者が哲学に興味を持つに至った過程が多く描かれているから、本書は哲学の初学者にとてもとっつきやすい。

反面、(それほど最初は気にならなかったが)やはり本書は個人的である分だけ内容が偏っているような気がしてならない。個人的な見解だが、竹田青嗣が影響を受けた現象学やフッサールに対する扱いや評価があまりにも大きすぎる気がする。本書は「哲学の入門書」というよりは「竹田青嗣流現象学の入門書」なんじゃないの? なんて穿った見方もついついしてしまいたくなる。

入門書にしては偏っているからふさわしくないような気もするけれど、ただ、これよりも良い入門書があるのかと言われたら、あまりないような気もする。何より、その「とっつきやすさ」は大きな魅力である。ということで、本書に多少の距離を取りつつ読み進めていける人には、個人的には哲学の入門書として大いに推薦したいと思う。