渡辺浩弐『BLACK OUT』

物理学者(男)と犯罪心理学を研究していたFBI留学経験者(女)の2人の精鋭がチームを組んで警察の非公式な科学捜査部を作り、従来の鈍重な組織では太刀打ちできない科学犯罪やハイテク犯罪を解決していく――という一連の連作小説。

ジャンルは、一言で書けば近未来SFである。ショートショートでない分だけ人間ドラマやストーリーをより深く楽しめるようになっている。俺はとても面白いと思う。問題意識と鋭い視点によって常識を揺るがせるものが本物のSFなのだと本書は認識させてくれる。本書もSFだから、アイデアや世界観を詳しく言えないのがとても残念なんだけど、非常にオススメの1冊。

ラストについては賛否両論あるだろうし、俺も失敗じゃないかと――というか物足りなく思うけれど、まあ本書の扱うテーマは非常に難しいものを多く孕んでいるから、そう軽々しく結論を出せるものでもないし、あのようなラストをあえて選ぶのも仕方ないんだろう。