(けっこう人気のあるらしい)講談社選書メチエの「知の教科書シリーズ」の第4弾。本書は世界システム理論で有名なウォーラーステインの入門書である。内容は、ウォーラーステインと現代社会との関わり・ウォーラーステインの生涯と思想の遍歴・ウォーラーステインの重要な概念の解説・ウォーラーステインの考え方を利用しての応用的な議論・著作の解説――と、入門書としてソツなく作られていると思う。ウォーラーステインの考え方は本書の前半部分を読めばわかる仕掛けとなっている。エッセイ調の文章なので1日で大半を読めるだろう。
ウォーラーステインの生涯と思想の遍歴を記した前半部分(「生い立ちと思想」)は、著者の生涯と重ね合わせながら平易な言葉で述べられている。著者のエピソードはとっつきやすくもあり邪魔でもあるが、まあ目くじらを立てても仕方あるまい。俺はエッセイだと思って割り切って読んだ。後半部分の、ウォーラーステインの考え方を利用しての応用的な議論(「三次元で読むウォーラーステイン」)は、ちょっと俺には退屈なところもあったけど、まあこんなものだろうと思う。「イギリス風朝食の成立――庶民生活史のためのウォーラーステイン」なんかは興味深い論議だった。
ちなみに、(本書に書いてあったのだが)日本の「おかず」に相当する英語って何でしょう? 和英辞典を引くと一応「side dish」と書いてあるが、「<おかず>に相当する英語はない」そうだ。イギリス人には日本人のコメ信仰のようなパン信仰は存在せず、日本人のような「主食」「おかず」といった概念もなく、ただ色んなものを食べて生活している「雑食」性の国民である。らしい。本当だろうか? 奴らは「主食」も「おかず」もなしに、ただ食ってるだけなんだよ、って言われても、すぐさま「ハイそーですか」とは納得しがたい。でもまあ、確かにイギリス人には日本人のような主食信仰はない感じがするな。