山本真司『会社を変える戦略――超MBA流改革トレーニング』

「超MBA流」というタイトルがどうにも鼻につき、(良いという評判は聞いていたものの)今まで手をつけなかった本。しかし本書は読まず嫌いを後悔したほど楽しめた。簡単に書けば、本書は『ザ・ゴール』などと同じビジネス小説で、「架空のスーパーが様々な改革を行って優良企業へと変貌していくストーリー」といった感じのアウトラインである。

確かにビジネスと物語の融合は本書にとってプラスだが、魅力の源泉はそこではない。本書の魅力は「80〜90年代の経営のトレンド」が整理できるところにある。物語(ケーススタディ)は約10年に及ぶが、株主がどのようなことを企業に期待してきたか、そしてその時代その時代に一体どのような概念が考え方が企業の意志決定や物差しとして機能してきたか、そういった経営学史的な事柄が、物語を通して非常によく理解できるのである。「先を知りたい!」という物語の吸引力に負けてしまい、深く理解できないまま進んだ箇所も少しあるが、それらは別に本書の責任ではなくて俺個人の責任である。まあ、いずれ学び直したいと思う。オススメ。