パラダイス山元の名前を知らない人は多くても、この人の姿は一度くらい見たことはあるんじゃないか。顔は「少し痩せた松村」って感じで、極彩色でフリルなマンボ着を着用している。本業(?)のマンボな作詞・作曲・演奏を積極的にこなす一方で、マンボ以外の活動でも地味かつ広範に活動している。例えば、パラダイス山元はグリーンランド国際サンタクロース協会に認定されたアジア・日本地区で唯一の公認サンタクロースであり、サンタクロースとしての活動に余念がない。また「マン盆栽」の創始者・家元としての活動も活発(?)である。……怪しすぎる。いとうせいこうや荒俣宏に匹敵する怪しさ!
そんな怪しさ溢れるパラダイス山元の「マン盆栽」について記したのが本書なのだが、この「マン盆栽」を説明するのは少し難しい。ひとまず巻末の「マン盆栽重要単語集」と裏表紙のコメントを引用すると、マン盆栽とは、控えめに言えば「枝振りの悪いフツーの盆栽にフィギュアを絡ませただけのインチキな藝術」であり、大袈裟に言えば「盆栽+フィギュアで意外なドラマを演出する都市型グリーンアート」であろうか。つまり「マン盆栽」とは、通常の盆栽の流儀や伝統や格式にとらわれることなく、個人の力量や手間暇やスペースに従って楽しみとして自由に盆栽を作り、そこに思い思いのフィギュアを絡ませるなどの一工夫を入れることで、面白さやテーマ性を浮かび上がらせることを目論む、ポップアートのことなのである。
しかし、こういった手軽なポップアートの場合、説明しようとすればするほど実像から離れてしまうというジレンマがある。パラダイス山元の「緑の少ない都市生活のなかで、自然を普段の生活のなかに自分流に取り込みたくて始めたのが、このマン盆栽です」という言葉を引用することで、かろうじてバランスが取れるだろうか。
画像がないのでピンと来ないかもしれないが、正直、俺はかなりマン盆栽に惹かれてしまった。面白そうなので実際やってみたいなとマジで思う。ベランダくらいのスペースで十分に可能だし、デジカメでパッと撮影してHPにサッと掲載するのに適している。「気軽さ」はポップアートに限らずやはり重要な魅力の要素なのだと俺は思う。ちなみにマン盆栽の由来は「マンボ+盆栽」である。名称はどうかと思うが、この適当さ加減が敷居の低いマン盆栽の魅力を的確に表現しているのかもしれない。
なお、本書は全文英訳つき。英語で言うと「Mambonsai」だ。英訳をつける意味なんてあるのかと思ったが、海外でもポップアート・グリーンアートとして人気が出てきているのだそうだ。なるほど。海外の精神病院では箱庭療法のような感じでマン盆栽を取り入れているところもあるらしいし、冗談でなく、マン盆栽の可能性は大きい。文庫版は約600円と安いし、オススメ。