D[di:]『キぐるみ』

インキュベ日記に書こうか少し迷った作品。「小説×マンガ BRAND-NEW NOVEL COMIC」と銘打たれているように、漫画と小説の複合なのである。といっても漫画の中に字数が多いとか、小説の挿絵が多いとか、そういったものとは根本的に異なる。本書では、文章もコマ割りの中で語られる。読まないとピンと来ないかもしれないが、何とも言えない独特の世界観を持つ、実験的な作品だ。

内容もかなり面白い。カワイイことが絶対的な価値を持つ「着ぐるみの街」に生まれた少年トシは、かわいくないゆえに着ぐるみを着せられて育つことになる。この町では、素で美しい者しか素で生活することは許されないのである。「外」から着ぐるみの生活を見られることで成り立つ着ぐるみの町。しかしトシは、「清潔」かつ「楽しげ」に設計されたこの町から脱出を試みる――まあこんな感じのプロローグかな。かなり俺の好みをピンポイントで突いてくるストーリーではある。

かなりオススメの本ではあるが、「漫画」として扱われることも多いかもしれないので、小説やサブカルの売場で見つからなかった場合は漫画の売り場で探して購入してほしい。活字がギッチリ詰め込まれているので、なかなか読み応えがある。

なお作者のD[di:](ディー)はなかなかカワイイ。イラストレーターやモデルとしても活躍しているそうだ。マルチですなあ。