相田洋『NHKスペシャル マネー革命 [第1巻] 巨大ヘッジファンドの攻防』

NHKで放送され大きな反響を呼んだ「マネー革命」というシリーズ番組の書籍版である(テレビは4話だが、書籍は全3巻である)。金融に精通していないメンバーばかりで結成したプロジェクトチームの面々が、耳学問によって金融の世界を知る――といったアウトラインだ。扉部分を少し引用しておこう。

モノ作りでは世界的な地位を築き、多くの外貨を稼ぎ、経済大国になった日本。しかし、それを護るべき日本の金融機関が護送船団方式に安住している間に世界経済は驚くべき変貌を遂げている。世界の金融界のデファクト・スタンダードを作り上げた革命児たちの思想と方法に迫り、来る21世紀の世界経済を予見する迫真のヒューマンドキュメント。

要は、金融や経済を教科書的に説明するような本では全然なく、金融や経済の中で生きる人々にスポットを当てることで、金融の現状や課題を浮き彫りにしようとする本だ――と考えてもらって良いと思う。

第1章は「金融のことがわかる映画や小説を題材にした架空の講義録」といった感じだが、正直つまらなかったので、ほとんど読み飛ばした。しかし第2章以降は非常に面白い。様々なメディアを駆使する敏腕トレーダー、逆にメディアやコンピューターを全く使わずに取引所に経ち続け、そこでの情報のみで大金を動かすローカル・トレーダー、一瞬にして破産してしまった天才トレーダー、全く独自のシステムを作ることで他人の一歩先を読もうとするトレーダー、巨大ヘッジファンドのボス――そうした人々に(時としてアポなしの)取材を行うことで、本書は金融の凄まじさを垣間見せる。0.5秒の速度差が損益を分ける、15分で数百億円の損益を生み出す、そんな世界だ。かなり面白いと思う。熱気が伝わってくる。必読。