相田洋『NHKスペシャル マネー革命 [第2巻] 金融工学の旗手たち』

マネー革命シリーズの第2巻。今回は、金融の革命を引き起こしたとも言えるオプション価格の算定式「ブラック・ショールズ・モデル」を生み出した、フィッシャー・ブラック、マイロン・ショールズ、ロバート・マートンを中心に、金融業界の潮流を追っていく。

とはいえ「マネー革命」の番組作成チームは金融の門外漢ばかりだから、ブラック・ショールズ・モデルを詳細に検討していくというようなものではない。基本的には『NHKスペシャル マネー革命 [第1巻] 巨大ヘッジファンドの攻防』と同じスタンスである。3人がそれぞれ、どのような経緯を経て、そしてどのような問題意識を持って金融と関わるようになり、そしてどのようにブラック・ショールズ・モデルを生み出すに至ったのか、そういったことをインタビューを通じて浮き彫りにすることで、金融の現状や課題を浮き彫りにしようとする試みである。

デリバティブ理論の生みの親とも言えるショールズとマートンは、その理論でノーベル経済学賞を受賞している。そして自らの理論を元に「ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)」という世界最高峰のヘッジファンドを運営しており、本シリーズのインタビューに「リスク管理に高い能力があるから大きなリスクを取ることができ、したがって大きく儲けることができるのだ」と語っていた。理論でも実践でも世界最高峰の能力を発揮していたと言えるだろう。

しかし、その取材のわずか3ヵ月後、まだ番組を放送する前にLTCMは破綻してしまうのである。リスク管理がいかに難しく、そして高いリターンのためには高いリスクを取る必要があるかということを、理論と実践の双方で最高峰に上り詰めた2人の失敗が雄弁に物語っている。非常にスリリングで面白いシリーズだ。