竹田陽一+栢野克己『小さな会社★儲けのルール』

日本企業の99%は小さな会社なのだから、MBAなどで強者の理論を学ぶよりも、ランチェスターの法則(ランチェスター戦略)を学んで弱者の経営手法をマスターすべきだ、という本。ネットで爆発的に支持されていたので購入してみたが、ランチェスターの法則は正直どうも胡散臭いし、どうしても根本的に認めがたい箇所も幾つかあって、あまり好きな本ではない。まあ大枠ではそこそこ納得できたし、中小企業の経営者になったらピンと来るのかもしれないが。

著者の考える経営戦略は「商品戦略」「エリア戦略」「客層戦略」「営業戦略」「顧客戦略」「組織戦略」「資金戦略」「時間戦略」の8つだが、本書では重要な1つ目から5つ目までの戦略を解説している。(8つ目も少しだけ解説している。)まあ8つに分けてはいるが、弱者戦略は全て「あれもこれも手広くやるのではなくニッチを志向した戦略を立てて実行する」ことに集約できそうだ。大手が入ってこられないような商品に専門特化して、商品数を減らし、大都市は避けて郊外で起業し、客層を絞り込み、営業エリアも狭く狭く大都市が入ってこられないところで集中的に売り込む――など様々なアドバイスがあるが、要は手広くやらずライバルの少ないところに特化して全力投球することが大事だということのようだ。

大枠では納得できるものの、ある程度のセグメンテーションは強者にとっても常識ではないだろうか。そもそも手を広げないことが弱者の戦略というのはイマイチ納得できない。強者になっても手を広げすぎないことは常識だと思うし、弱者だって時には多角的に事業を展開しなければ、産業構造の変化に適応できないような気もするんだけど。だから本書の「強者の法則」「弱者の法則」といった区分自体あまり好きになれない。

ただ、あえて営業エリアを狭め、さらに拠点展開を否定して地域の占有率を高める「エリア戦略」などは、確かに大企業よりは中小企業向きだし、有効性は高いのかなと思った。「東京のあとは大阪に支社を出すぞォ!」「関西で成功したから次は東京に進出だァ!」となると勢いは確かに凄いが、本書の言うように小さな地域やニッチな商品で一番を目指すという発想の方がメリットは高そうだ。地に足をつけた経営とでも言おうか。