大前研一+宮本雅史『感動経営学――ヴィーナスフォート誕生秘話』

言わずもがなの大前研一と、わずか33歳でスクウェアの社長を引退した宮本雅史が、ヴィーナスフォートという20〜30代の女性をターゲットにしたテーマパーク型ショッピングモールを作り上げた経緯をまとめた本である。

本書では旧態依然の「街の雰囲気に合わせたショッピングモールを作る」「ヒットしたショッピングモールのコピーを作る」といった形態は完全に否定されている。本書で紹介されているプロジェクトは「どのような人が来るか」といった「まず箱モノありき」「まず街ありき」ではない。「どのような施設を作ってどのような人を集めるか」というセグメンテーションを明確化した、「まずコンセプトありき」なのである。臨海副都心という何もないところに、人の流れを一変させるほどの力を持ったショッピングモールを作り上げている。

スクウェアと全く違う仕事を鮮やかな手腕で成功させた宮本雅史もさることながら、大前研一は毎度毎度スゴいなあと思う。状況や常識に依存するのではなく、状況や常識そのもののパラダイムを転換させ、新たなスタンダードを作り上げている。