田村洋一『なぜあの人だと話がまとまるのか?』

話をまとめるために決定的に必要な要素は、ロジカルシンキングでも問題解決手法でもなく、緊張構造を作り出すことだ――というのが本書のアウトラインだろうか。

話がまとまるためには「ゆるめる(明らめる)」「伸ばす」「縮める」という3つのステップがあるそうだ。

まず、現状を明らかにして、最も悪い状態を想定することで、これ以上は悪いことは起こらないとリラックスする「ゆるめる(明らめる)」段階。次に、何のために話がまとまってほしいのか、何の話をまとめたいのか、どのようにまとめたいのか、そういったビジョンのWhyとWhatとHowをきちんと思い描く「伸ばす」段階。最後に、現状とビジョンが明確になっていれば、現状とビジョンとのギャップを埋めるために緊張構造の動的エネルギーが働き、社会変革への大きなエネルギーが生まれる「縮める」段階へ進むのである。緊張構造の動的エネルギーなどと聞くと怪しげな感じもするが、これは別に怪しげなことを言っているわけでも難解なことを言っているわけでもない。話をまとめるには、やみくもに努力するのではなく、まず現状とビジョンを明確することが大事である、ということを「緊張構造の原理」という組織構造の法則を援用して説明しているのである。

本書は一応ファシリテーションに関する本ということになっているが、狭義のファシリテーションの技法を前面に押し出しているわけではない。

もっと広い意味合い――物事を成し遂げるためのステップを学ぶ本として読まれるべきだと思うし、その意味では、本書は有効な示唆を与えてくれると思う。

とても面白い。