- 作者: 真山仁
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2008/03/07
- メディア: 文庫
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外資系ファンドのターンアラウンドマネージャーが地熱ビジネスを行う中小企業のCEOに就任するというのが大まかなストーリーなのだが、正直あまりその設定は活きていないように思う。実に面白いテーマを選んでくれているので、もっともっとビジネスの専門的な描写を増やして良かったんじゃないだろうか。こういうビジネス小説を読む人は、それなりにビジネスで揉まれている社会人が多いだろうし、専門的な描写が多くても問題ないだろう。例えば(ネタバレしないように少ししか書けないが)地熱ビジネスが進まない理由が「利権」というのでは、まあその通りとは思うんだけど、ちょっと深みに欠ける。その利権構造を瓦解させるには具体的にどうして行けば良いのかも知りたいし、地熱エネルギーを普及させるために変えていかなければならない法律やビジネス慣行の種類、変えていくために必要な労力や時間、地熱発電以外の競合の具体的な反応、といったことも示してくれると面白いかなと思った。
ところで寡聞にして「地熱発電」という方式自体が初耳だったのだが、本書での説明はわかりやすくて、すっきり頭に入る。面白かったのは、原子力も火力も地熱も発電の根本的なメカニズムは同じだということ。結局は水を沸騰させて、その水蒸気でタービンを回しているらしい。核融合により発生する膨大な熱エネルギーは、水の沸騰に使われていたのか(笑)