ジャルヴァース・R・ブッシュ+ロバート・J・マーシャク『対話型組織開発』

対話型組織開発――その理論的系譜と実践

対話型組織開発――その理論的系譜と実践

  • 発売日: 2018/07/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
翻訳者は中村和彦で、先日読んだ『入門 組織開発』の著者でもある。『入門 組織開発』と本書で、少なくとも一般ピープルに対しては、組織開発の第一人者であるという地盤は固まったのではないだろうか。なんせ650ページだからね……わたし自身、本書は流し読みスタイルでの読了となった。

さて、わたしなりの理解ですごーく簡単かつ乱暴に内容をまとめるが、まず組織開発というのは現在「診断型組織開発」と「対話型組織開発」という2つのアプローチがある。前者の診断型組織開発は、診断(サーベイ)をして現状把握をしてから組織変革に取り組み、後者の対話型組織開発は、診断をせず代わりに対話を中心に組織変革に取り組む……と、まあそういう話である。ただし、この字面だけを表面的に読むと、理解を誤ることになると思う。サーベイによる現状把握が無いよりはあった方が良いに決まっているから対話が組織開発は劣った方法論であるという誤解や、診断型組織開発は対話を一切しないのかという誤解だ。もう少し丁寧に書くと、診断型組織開発というのは従来型の組織開発アプローチで、要するに現状の悪いところを見つけて、現状をベースにより良いものに変えていこうという方法論である。一方、対話側組織開発はより新しい組織開発アプローチだ。著者の言葉を借りるなら「対話を通して、これまでの見方や前提、支配的な語られ方に創造的破壊が起き、自分たちの見方や前提に対する見直しと意味の形成がなされ、その過程で立ち現れる創発を通してイノベーションが起こる」のである。現状ありきで悪いところを見つけて治すのではなく、対話を通して組織イノベーションを起こすのがポイントなのだと思う。そのための理論やアプローチはかなり豊富に書かれている。

と言っても、これ本当にやれるのかな、と正直思う。

日本企業に、対話を通して創造的破壊が起こることを期待するのはかなり難しいような気がするからだ。

わたしは「とりあえず通読する」ことが多く、本書もとりあえず通読してしまった。今後、ちょっと日を置いてから再度手に取り、熟読してみようと思う。それで響くものがあれば、これは一生モノの本になるだろう。