P.F.ドラッカー『歴史の哲学――そこから未来を見る』

ドラッカー名言集の1冊。本書では、歴史的な事実や法則・教訓などが示している「社会の本質」についての名言集である。

パラダイム・チェンジを問う
社会生態学(ドラッカーの造語で、ドラッカーは自分を社会生態学者だと位置づけている)の仕事とは何か。それは、通念に反することで、すでに起こっている変化は何か、流行りの言葉で言うところのパラダイム・チェンジとは何かを問いつつ、社会とコミュニティを観察することである。次に、その変化が一時的なものでなく、本当の変化であることを示す証拠はあるかを問うことである。そして、もしその変化に意味と重要性があるのであれば、それはどのような機会をもたらすのかを問うことである。

バタフライ効果
今日急速に発展しつつある現代数学の複雑系の理論によれば、複雑なシステムは、短期については予測不可能であることが証明されている。複雑なシステムは、短期的には統計的に有意でない要素によって支配される。これをバタフライ効果と呼ぶ。奇抜ではあるが、数学的に厳格に証明され、さらに実験的にも証明された法則によれば、アマゾンの熱帯雨林で羽ばたきする蝶は、数週間後あるいは数ヵ月後、シカゴの天候を変えることができるし、事実、変えることがある。

現代に生きる俺らは、行動者であると同時に、社会生態学者でなければならない。蝶の羽ばたきを予測することはできなくても、変化を読み取り、変化を味方につけなければならない。まったく、大変な時代に生まれたものだ。しかしパラダイムシフトに直面していることは、大きな喜びでもあると思う。