野田稔『コミットメントを引き出すマネジメント』

野田稔は、野村総研・リクルートを経て、現在は藤原和博と同じくリクルートのフェローであり、外資系の人事コンサルティング会社ワトソンワイアットの社外取締役も務めている。時々テレビにも出ているので、顔を見たことのある人もいるかもしれない。本書の内容は、いかにしてコミットメント(本気)を引き出す組織を作るか、といった感じであろうか。うーむ、さすがメディア慣れしているだけあって、なかなか読ませる。

特に、ケース事例で出てきたゴア・アンド・アソシエーツ社の、階級組織を完全に廃したラティス(格子)状組織というのはとても面白かった。「チームリーダーが互選で決められる」「新しいことを始める際に誰にも許可を得る必要はないが、その代わり自分1人で決めない方が良いと判断した場合は社内の誰かに相談することが義務づけられている」「スポンサーと呼ばれる相談相手を最低2人は持つことが義務づけられている」「大きな問題の決定の場合は結果的に相談の連鎖が組織に広がり、決定が行われる」「その結果、判断が失敗だったとしても、みんなが適切に相談された結果であれば、誰も責任をとらない」「しかし、誰かが自分の能力を過信したり面倒に思ったりして、相談すべき場面で相談しないことで会社にマイナスの影響を与えてしまった場合は、その人は非常に厳しく罰せられる」といった具合である。

要するに、「和」とでも言おうか、ある種の合議制でタレントをまとめ上げ、コミットメントを引き出しているのである。あまりにユニークすぎて一般的な企業が取り入れるのは難しいだろうが、面白い事例ではある。