政岡勝治『総合商社の非総合性研究』

総合商社の非総合性研究

総合商社の非総合性研究

昨日読んだ岩谷昌樹+谷川達夫『総合商社 商社機能ライフサイクル』の主要なテーマとなっていた「総合商社の総合性」に着目して調べたところ、本書を発見し、急いで読了した次第。本書と『総合商社 商社機能〜』は「総合商社の総合性」に対することなるスタンスを取っており、セットで読むと面白いかもしれない。
総合商社―商社機能ライフサイクル 総合商社の非総合性研究
さて本書および本書の元となった博士論文の結論は、総合商社には部門を超えた連係プレーは少なく、総合性よりも非総合性の方が強く見られる、という『総合商社 商社機能〜』とは正反対のものである。そうした非総合性の発生理由は「商品事業部制」「管理」「連携に頼らない業際活動」「外部競争の集合体」の4つであり、この4つが絡み合うことで「営業組織間の連携の希薄化」つまり「機能的非総合性」が生まれた……というのが本書の主張である。
本書はM社(三菱商事)の事例研究という形を取っているが、三菱商事は最大規模の総合商社であり、最も「総合商社らしい会社」と言って良く、この事例研究は多くの商社に当てはめて考えることが出来るだろう。俺のPJ経験や知人・友人を思い返してみても、確かに総合商社は野心的な営業マンの集まりであり、事業部毎の競争意識も非常に強い。そういう企業風土における事業部を超えた横の連携が生まれづらいことは、想像に難くない。