伊藤守『小さなチームは組織を変える――ネイティブ・コーチ10の法則』

小さなチームは組織を変える―ネイティブ・コーチ10の法則

小さなチームは組織を変える―ネイティブ・コーチ10の法則

組織の基本は、組織の最小単位である1対1である――というコーチングの前提から、特にコーチングを専門的に学んだわけではないけれども1対1で相手の良さを引き出せるような振る舞いをしている「ネイティブ・コーチ」の行動を取り上げている。大事なのは、「コーチングとはなにか」ではなく、「なにが実際にうまくいっているのか」「なにが機能しているのか」という事実です――という指摘は、さすが日本におけるコーチングの第一人者だけあって、現在のコーチングブームのマイナス点の本質を突いていると思う。(ただ、良くも悪くも現在のコーチングブームを呼び込んだのは、著者と著者の会社でもある。)
とりあえず個人的には必読。
あと、ソーシャルキャピタル(人と人のつながり=社会関係資本)といった概念を紹介し、さらにコーチングの概念に取り込んでいるところが非常に面白かった。ソーシャルキャピタルは、(まだ途中までしか読んでいないが)ハーバード・ビジネス・プレスが選んだ2001年度ベスト経営書である『人と人の「つながり」に投資する企業』という本の存在を知って以来、個人的に気にかけている概念である。前にAmazonだかbk1だかの書評コーナーで誰かが書いていたが、著者のコーチングの概念が少しずつ変化・洗練されているように見えて、非常に興味深い。