- 作者: 高木晴夫
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2012/04/20
- メディア: 単行本
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まず著者は、日米企業の組織アーキテクチャーを以下のように整理する。
- 日本企業:人が仕事を作る「人ベース」
- 組織の「タテ方向」の動きと「人材と処遇」の重視が強く表れる
- 米国企業:仕事が先に定義される「仕事ベース」
- 組織の「ヨコ方向」の動きが強く表れる
もちろん「人ベース」あるいは「仕事ベース」のみの特徴しか持たない企業は存在しないが、概ね、日本企業は「人ベース」重視の組織、米国企業は「仕事ベース」重視の組織を採用している。そして「人ベース」と「仕事ベース」のどちらが強くなるかは、専ら終身雇用制度を採用しているかどうかに起因する。
また著者は、近年のグローバル化と情報化の環境で企業に求められる組織能力を以下のように整理する。
- 環境変化の方向と度合いを事前に見通す能力
- 経営活動の方向性を示す意思決定の速さ
- 決定されたことの実行の速さ
上記3点の組織能力は「人ベース」と「仕事ベース」のいずれであっても獲得可能である。ただしこれまでの組織能力をゼロリセットすることはできないため、日本企業の進化の条件は、日本企業の「人ベース」の強みを活かしながら「仕事ベース」を部分的に導入し、組織能力のハイブリッド化を果たすことである。そして日本企業に導入すべき「仕事ベース」の特徴は、戦略トップダウン、組織OS(標準化された業務遂行の仕組み)である。なお日本企業が組織能力のハイブリッド化を果たすには、人事情報の客観度の向上、出向・人事交流を増やすことによる外部情報の取り込み、少子高齢化に代表される近年の労働市場の変化を勘案した優秀なグローバル人材の採用なども必要である。
……と、こんな感じで本書の内容を要約できるだろう。
この研究プロジェクトは3年に及んだそうだが、2007年9月発売の『トヨタはどうやってレクサスを創ったのか “日本発世界へ”を実現したトヨタの組織能力』にも「人ベース」と「仕事ベース」の概念が既に紹介されていたため、構想と執筆を含めると5年から10年に及ぶ壮大なプロジェクトになると思われる。それだけに俺は「経営学や組織行動論・組織マネジメントの研究者である著者の集大成となる1冊になるのではないか」と期待していた。
しかし読み進めるうちに、俺の中には否応なく「わざわざ研究しなくともわかるようなことしか書かれていない」という思いが強く沸き起こっている。いわゆる肩透かしである。もちろん書かれた内容に大きな違和感はない……のだが、この研究プロジェクトを通じて新たに解明したものとは、果たして何なのだろうか?