インキュベ日記ベストセレクション2005

2005年に読んだ本の中から特に印象深かったものを取り上げてみたい。

荒俣宏『帝都物語 第壱番』『帝都物語 第弐番』『帝都物語 第参番』『帝都物語 第四番』『帝都物語 第伍巻』『帝都物語 第六番』

1980年代の本だし、今までに何度も読み返しているので、“2005年読了”というカテゴリーに入るかどうかは微妙だが、文句なしに楽しんだ。魔人の怖さは今なお傑出している。






荒俣宏『性愛人類史観 エロトポリス』

本書も今までに何度も読み返しており、やはり“2005年読了”というカテゴリーに入るかどうかは微妙だったものの、再読であることを含めても文句なしに楽しませてもらった。外せない作品。

石原千秋『評論入門のための高校入試国語』

現代日本の教育問題を「受験国語」という独創的な切り口から問いただすシリーズの完結作。この後、『国語教科書の思想』によって学校国語の問題をさらに深くえぐることになる。

重松清『疾走(上)』『疾走(下)』

2005年は重松清の本を集中的に読んだ。どれも面白く、特に『流星ワゴン』『きよしこ』『哀愁的東京』『幼な子われらに生まれ』あたりも非常に良かった。しかし人情やモラトリアムといった重松お得意の展開から飛躍したが故に、圧倒的な物語の強度を獲得し得たという点で、本作『疾走』を選びたい。


鈴木貴博『逆転戦略 ウィルコム 「弱み」を「強み」に変える意志の経営』

ケータイ各社はプッシュトークだのLOVE定額といった新サービスを続々と投入しているが、正直に言ってウィルコム(WILLCOM)の定額プランの相手ではないと思う。1人と定額より、ウィルコムユーザー全員と定額の方が嬉しいに決まっている。弱点であった端末のヘボさも、W-ZERO3の品切れ騒動や京ぽん2人気に代表されるように、少しずつ解消されつつある。本書の丁寧な取材と予見性を大いに評価したい。ちなみに俺は、docomoからウィルコムに乗り換えて半年ほど経つが、幾つかの不満を差し引いても、乗り換えには概ね満足している。もっとウィルコムユーザーが増えてくれると良いのだが。とりあえずウィルコムが2006年にどのようなサービスで騒がせてくれるのか期待したい。

日垣隆『そして殺人者は野に放たれる』

背景も含め議論を完全に理解できているとは思えないので、改めて取り上げることに危うさを感じたのも事実。しかし本書はもっともっと注目されて良いと思うのである。

村上春樹『海辺のカフカ(上)』『海辺のカフカ(下)』『少年カフカ』

文句なし。村上春樹の著作は(翻訳以外)絶版も含めほとんど読んでおり、外せません。



山田真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』

書名を見た瞬間「これは売れるな」と直感し、逆に敬遠していたが、食わず嫌いはイカンと反省させられた本。まだ読んでいない人は、今からでも是非とも読むべし。

ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード(上)』『ダ・ヴィンチ・コード(下)』

これまた売れすぎて敬遠していたのだが、実際に読んでみると本当に面白かった。象徴学や美術や暗号なんてマニアックなモチーフのどこに一般大衆がそれだけ惹かれたのか、正直よくわからないが、まあ面白いのだから何でも良いです。映画化も決定しているそうだが、映像付きの方が謎解きもわかりやすくなるため、映画化は成功する気がする。


あべまさい『おかあさまのためのコーチング』

次点として、おまけの1冊。最近はコーチングやファシリテーションといったコミュニケーション関係の本がブームさながらの様相を呈しているが、その中でも等身大の切り口で最も共感できた。2005年はビジネス系の本や自己啓発書をけっこう読んだが、その時は「ほほー」と思っても、時間を経てもなお心に響き続けるような本はあまり多くなかった――というのが総評になるだろうか。そのためか、いわゆるベストセラーや昔の本がけっこうセレクトされている。今後、中途半端なビジネス書や自己啓発書を読む量はかなり減るだろう。まあ大前研一は自慢話を読みたいので今後も手に取るつもりだが(笑)