山本英夫『のぞき屋[文庫版]』2巻

のぞき屋 2 (小学館文庫)

のぞき屋 2 (小学館文庫)

のぞきに執念を燃やすのぞきのプロフェッショナル・見(ケン)、目が悪い代わりに人間離れした聴力を持つ聴(チョウ)、見の後輩・スマイル、変態オヤジから助けられて仲間に入った元管理売春リーダー・レイカ、愛犬ハスキーというフルメンバーが2巻で揃う。1巻から2巻にかけては「管理売春」と「近親相姦」というデリケートなモチーフを選んだが、それを当事者の立場でも評論家の立場でもなく、「クライアントの依頼によるのぞき」という視点で描写したところが、とにかく面白いと思う。
2巻では、いわゆるストーカーを先取りしているようなキャラクターが出ている。エレベーターガールに劣情を抱いて追いかけ回す変態男は確かにストーカーなのだが、(ろくに話したこともないのに)彼女は俺のことが好きだと思い込んで「エレベーターガールをのぞいてほしい」と「のぞき屋」に依頼する純情なる上京男、コイツも充分ストーカーであろう。
好きな人のことをたくさん知りたいと思うのは当然のことだし、振られても好きなものは好きだというのも当然のこと。純情とストーカーの微妙な境目を「のぞき」という視点からあぶり出そうとするのは、非常に面白いと思う。もう10年以上も前に発表された作品だが、いま読んでも全く古びていない。