ジョージ・R・R・マーティン『タフの方舟1 禍つ星』

タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF

タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF

慇懃無礼で猫好きで身長2.5メートルで太鼓腹で無毛で菜食主義者という、物凄く濃いキャラクターである宇宙商人のハヴィランド・タフが、運命の因果により、1000年前に全滅した地球連邦帝国環境工学兵団が持っていた生物戦争用の胚種船を手にする。そしてタフは、しがない宇宙商人を廃業し、惑星を訪問して環境エンジニアリングの技術(要は遺伝子工学やクローニングの技術)を駆使した惑星の問題解決により問題解決を行う「環境エンジニア」として生計を立てるようになる――という設定である。
全2巻なのだが、これは傑作だ! こんな面白いSFがあったとは驚きである。いわゆる理論的整合性を緻密に追求したタイプのSFではないかもしれないが、キャラが立っていて、ハッタリが効いており、夢があり、現代への批評精神があり、そしてアイロニーがある! 訳文も、正確かどうかは知る由もないが、翻訳的な堅苦しい文章ではない。タフのキャラが上手く活かされる文体であり、どんどん読める。
これ以上、何を望むと言うのだろう? 大推薦!