松本大洋『ナンバーファイブ(吾)』7巻

吾 7 (BIC COMICS IKKI)

吾 7 (BIC COMICS IKKI)

地表の70%が砂漠で覆われた遠未来の地球を舞台に、「国際平和隊」を率いる9人の幹部組織「虹組」からの逃亡を図るNo.吾(ナンバーファイブ)の物語――なんだが、6巻と7巻は、主人公はほとんど出てこない。もう1人の主人公であるNo.王(ナンバーワン)を中心に物語が展開する。
このNo.王(ナンバーワン)が曲者で、国際平和隊のメンバーを自分に同化させるほどの共鳴能力を持つ。そのため、理想郷を目指したNo.王(ナンバーワン)の深い悲しみと怒りに、国際平和隊メンバーが感化されてしまうのである。現象としては「クーデター」になるのだが、No.王(ナンバーワン)以外は誰も自分の意志で「クーデター」には参加していない。でも歴史上の事件や出来事を振り返ると「こういうことってあるよなあ」と思う。集団ヒステリーじゃないが、誰もが自分の意志で動いていると思いながら、実はそうではない、というようなことが。そしてそういう場合、得てして首謀者たちは自分たちの正当性を露ほども疑わない。
ただ、この物語の場合、No.王(ナンバーワン)は被害者でもあるから、そのあたりが難しいのだが。