城一夫+渡辺直樹『日本のファッション 明治・大正・昭和・平成』

日本のファッション 明治・大正・昭和・平成

日本のファッション 明治・大正・昭和・平成

明治開国から2000年代までの140年に渡る日本のファッションを、400点ものイラストを基に紹介・解説してくれている本。元々はプレゼント用だが、あまりに面白いので俺も買ってしまった。イラストや解説のみならず、巻末には流行色やファッションのキーワード・社会情勢までが年表で載っているなど、様々な観点から近代日本のファッションを巨視的に追うことができる。これは近代以降の日本の服飾文化をまとめた、極めて秀逸かつ充実したテクストだと言えよう。





1920年代だの1960年代だのと聞くと、あるいは和装だのモガだの竹の子族だのジュリアナだのと聞くと、とかく古臭く(と言って失礼ならば、懐かしく)感じてしまうが、勘違いしてはいけない。これらは全て、当時の文化シーンの最先端、すなわち「モード」だったのである。モードの真っ只中にある人間は懐かしさなど微塵も抱いてはいなかっただろう。しかし2011年現在の俺らは、80年代や90年代はともかく、セピア色にかすんだ白黒写真では、どうしてもそのモードな感覚を体感するのが難しい。その点本書は、膨大な資料を基に服装や色を検証した上で、1890年代のファッションも2000年代のファッションも同じタッチで描写することで、当時のモードとしてのファッションの迫力を再現することに成功している。

まとめよう。これは垂涎ものの絶品本である。こういう本を出版した作り手(著者・イラストレーター・編集者)のセンスに深く感謝したい。

余談

こういう本に出会うと、俺の「本は投資対効果が極めて高い」という持論の正しさがさらに強く実証される気がする。和装が色濃く残る1890年代から、ビッチ化が甚だしく進行した2000年代まで、その変遷をトータルに味わえる資料というのは、おそらく本書を除けば皆無であろう。これが2100円で買えるというのだから、ほとんど投げ売りレベルのお得感と言って良い。しかしAmazonのレビュアーからは「高い」という複数の声が聞こえる。この本に2100円を出し渋る人の投資ポートフォリオは一体どうなっているのだろう? 死ぬまで貯金し続けるつもりだろうか? こうした発想の方が多いとすれば、実にもったいないことである。

もちろん、この論理は専門書でも同様である。いや、むしろ強化されるかもしれない。専門書の中には5000円を超えるものも少なくない。まあ2000円ならともかく、例えば6000円だと、一見すると「高い」と思う方もいるだろう。しかし6000円というのは、それだけ手間がかかっていることと、需要や供給が少なく、つまりそれだけ稀少価値の高い情報が詰まっているということを示しているのである。もちろん興味の対象がズレていた場合は別だが、6000円の本をしっかり読んで血肉にして、6000円の価値がなかったと感じたことは、俺にはほとんどない。

本の中には、俺ら一般人が独力では100年かかってもアウトプットできないレベルの内容を整理してくれている本も少なくない。本書も同様である。古い情報に当たることも困難であれば、このようにビジュアル化することも不可能である。本書を大判にして5000円にしても、投資対効果がマイナスになることはない。