村上龍『すべての男は消耗品である。最終巻』

村上龍の傑作エッセイの最終巻。

何と34年も連載したそうだ。34年か……長いな。

80年代はイタリアがどうの、サッカーがどうの、ワインがどうの、セックスがどうのとただひたすら書いていたが、意外に早くバブル崩壊の頃には若干大人しくなり、それでもキューバがどうの、中田がどうのというややミーハーな傾向が続いた。それも静かになった後はファッション誌に載っていたとは思えないほど本質的な指摘が始まるものの、日本人や日本社会へのイライラや怒りはかなり鮮明になり、その後は諦め混じりの論調になり、ついには政治や社会に対する記載がほとんど無くなるに至った。

最終巻は、村上龍の毒気はほとんど抜かれている。

しかし時折ドキッとする指摘もあった。

最後に「すべての男は消耗品である。」という言葉に下の句があることはご存知だろうか? これは過去の本作を読んできた人なら知っている話なのだが、本書でも話題になっていたので書いておくと「だから自由だ。」と続くのである。消耗品だから自由……けっこう深いよね。