
- 作者: 武田雄治
- 出版社/メーカー: 中央経済社
- 発売日: 2010/05
- メディア: 単行本
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Amazonでの評価はイマイチだったが、なるほどとスッキリした箇所も多い。
特に、JGAAPの収益・費用アプローチと、IFRSの資産・負債アプローチの考え方の違いが、多くの会計基準の差異を生み出しているという説明は、目からウロコが落ちた。資産・負債アプローチが何なのよと思っていたけれど、極めて重要だとわかった。
以下は、読みながら書き留めた備忘録。
IFRSの特徴
- 原則主義(細則を「適用する」のではなく、深い理解に基づき「判断する」会計基準)
- No Exception(例外がない)
- Core Principles(原理原則(目的))
- No Inconsistencies(矛盾がない)
- Tried to Conceptual framework(概念フレームワークに直結)
- Judgment(判断)
- Minimum Guidance(最小限の適用指針)
- 詳細な注記開示
- 原則主義であるため、そのように判断した理由をきちんと開示する必要がある
- 比較可能性の重視
- 統一性(全てに同じ規則を適用すること)ではなく、時系列比較や他企業との比較ができることを重視するという意味である
- 資産負債アプローチ
- 利益計算の基本概念がJGAAPとIFRSで異なるが、その違いは、日本基準の貸借対照表の純資産の部に計上されている「評価差額」に計上された項目を“利益”と考えるか考えないか。
- 収益費用アプローチ(Revenue-Expense approach)を採用するJGAAPでは、その他有価証券評価差額金が期首と期末で変動しても、売却するまで実現利益として損益計算書に計上されることはない。
- 資産負債アプローチ(Asset-Liability approach)を採用するIFRSでは、未実現の利益は「累積その他の包括利益」として計上し、その当期の増減額を包括利益計算書上「その他の包括利益」として利益に含める。そして、「その他の包括利益」と「当期利益」を合計して、「包括利益」と呼ぶ。
- ただしJGAAPでも現在、包括利益の表示を導入する方法で議論が進んでいる。
- 経営者の恣意性の排除
- 収益費用アプローチによる収益認識は経営者の意図により大きく異なるが、資産負債アプローチは「期首と期末」の純資産の変動という、経営者の意図に左右されない業績を把握することができるため、より有用な会計情報を提供できるとIFRSでは考えられている。
- 経済的単一体説
- 親会社の株主のみならず、企業集団を構成する親会社および子会社の全ての株主のために作成されるべきであるという考え方である。
- 実質優先思考
- 例えば、連結子会社の範囲の決定も、持分比率が49.99999%だと子会社に該当せず、50%だと子会社に該当するということは、現実に即していないため、実質的に支配しているかどうかで判断しようという考え方である。
- 演繹的アプローチ
- 会計実務において慣習化されたものから妥当なものを抽出する「帰納的アプローチ」ではなく利用者の情報ニーズを満たす目的的合成のある会計情報を提供するために、論理的に推論を重ねて結論を導き出そうとする「演繹的アプローチ」を採用。
IFRSの個別論点
- 現金および現金同等物(Cash and chas equivalents)
- 売上債権(Notes and account receivable)
- 棚卸資産(Inventories)
- 有価証券(Securities)
- 有形固定資産(Property, plant and equipment)
- 減損会計(Impairment)
- リース会計(Lease)
- 投資不動産(Investment property)
- 無形固定資産(研究開発費会計)(Research and development)
- のれん(goodwill)
- 退職給付会計(accrued retirement benefits)
- 引当金会計(Provisions)
- ストック・オプション会計(Share Option)
- 収益(Revenue)
- 連結会計(Consolidated financial statement)
- 外貨建取引の換算(Foreign Currency Translation)
- 税効果会計(tax effect accounting)
- セグメント情報(Operating segments)
- 過年度遡及・修正再表示(Retrospective application, Retrospective restatement)
- 非継続事業(Discontinued Operations)
- ジョイント・ベンチャー(joint ventures)
- 財務諸表の表示(Presentation or Financial Statements)
- 四半期財務諸表(Interim Financial Repoting)
- IFRSの初度適用(First-time Adoption of International Financial Reporting Standards)