- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1986/02/17
- メディア: 文庫
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夏目漱石は胃弱で、修善寺で胃潰瘍の転地療養中に800gの大量吐血をして死にかけたこともあるくらいなのだが、その「修善寺の大患」と呼ばれる体験を中心に綴ったエッセイが本作である。ところどころ漢詩や俳句も挿入されている。
俺はいわゆる「文豪」と呼ばれる人々の作品をほとんど読んだことがなく、夏目漱石についても『坊っちゃん』と高校の頃に無理やり読まされた『こころ』くらいしか手に取ったことはない。しかし本作を読んで夏目漱石の印象が完全に塗り替えられた。
何という深く豊かな文体!
まず思ったのが、実に読みやすい文章であるということ。文豪というと堅苦しいイメージが強いが、よくよく考えると夏目漱石は新聞で小説を連載していたこともあり、実は当代随一の大衆作家なのだ、という事実に思い至る。
加えて、この時代はまだ漢字の使い方に共通認識がなかったのか、本書でも当て字すれすれの漢字や読みがなが多い。しかしそれ故に、言葉の自由さと、言葉の豊穣さを否応なく感じさせられるのである。
このエッセイが(少なくとも俺の知る限り)大して注目されていないのは、驚くばかりである。これは宝石のような作品ですよマジで。超絶大推薦!