小島てるみ『最後のプルチネッラ』

最後のプルチネッラ (Style‐F)

最後のプルチネッラ (Style‐F)

ヘルマフロディテの体温 最後のプルチネッラ (Style‐F)
Amazonでレコメンドされた『ヘルマフロディテの体温』と併せて購入。
『ヘルマフロディテの体温』と同じくナポリを舞台とした小説だ。主人公のルカ・マリンゴラは代々続く演劇一家「マリンゴラ一族」の少年で、特に祖父は最高の喜劇役者と呼ばれた名優だ。母も当世を代表する舞台女優で、離婚した父は演劇の世界では目が出ず見切りを付けたがテレビ俳優としては絶大な人気を博している。ルカも幼い頃は名子役として評判だったが、母親から演劇の世界に入ることを厳しく禁じられ、今は普通の少年として生活している……いや、生活していた。しかし色々あって母には内緒で演劇の世界に再び関わりを持つようになり、舞台「最後のプルチネッラ」の稽古を通じてナポリを象徴する道化「プルチネッラ」の謎に迫る……というアウトラインだろうか。
本書は「現代編」と「転生編」が交互に続く二重構造になっている。先ほど説明したルカの物語は当然現代編だが、現代編の章と章の合間には、前世の記憶を持って生まれ変わる(しかし記憶を持っていることを誰にも知られてはならない)道化の物語が綴られる。ルカとジェンナーロは道化・プルチネッラの謎に迫ろうとするわけなので、現代編と転生編は無関係では有り得ない。まあ二つの物語がどのように結びつくのかは本書を読んでのお楽しみだが、ジュヴナイル的な読みやすさとテクニカルな仕掛けが両立していて、なかなか唸らされた。
なお昨日読んだ『ヘルマフロディテの体温』も「主人公の日常世界」と「主人公が聞き書きした物語やレポートの世界」の二重構造になっていたので、小島てるみは劇中劇的な仕掛けが好きなのかもしれない。