村上春樹『女のいない男たち』

女のいない男たち

女のいない男たち

村上春樹の約10年ぶりとなる短編集。
本作のタイトルは『女のいない男たち』だが、どの短編でも、要は「女に捨てられたり裏切られたりした男」を描いている。
内容的にも安定して面白いのだが、最近の村上春樹の文章を読んでいて思うのは、村上春樹の文体がどんどんシンプルになっていることである。昔は「やれやれ」だの「わからない」だのといった特徴的な台詞回しがあるし、きゅうりのようにクール……はエッセイでの冗談だとしても、それに類する欧米的な直喩表現が多く用いられてきた。しかし近年の村上春樹の文章にはそのような台詞や表現があまり登場しない。つまり(表面的には)どんどん村上春樹らしくなくなっているのである。しかし読みやすさは更に向上している。

余談

今回もアンチ村上春樹がしこしこAmazonにレビューを書いているのかなと思ったら、そんな人は(今のところ)少数だった。アンチが湧き出るのは長編だけなのか?