
- 作者: 山田英夫
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2015/03/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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簡単に整理すると、「ニッチ戦略」というのは、大手が入り込まない(入り込めない)ような小さな市場で勝負する戦略である。ある限られた領域では凄く優秀で大手より強いが、大手はコストなどの理由からそこまでやりたくないから、ニッチ領域で活躍する企業を無視する……といった時に、ニッチ戦略が成功する。
次に「不協和戦略」は、大手の強みを弱みに転換させる戦略である。これが最も難しいと感じた。事例は、戦略系の本で何度となく出てくるライフネット生命。従来の保険会社は地域に根ざしたセールスレディを山ほど抱え、その営業力で保険契約を積み上げているが、ライフネット生命はインターネット等のオンラインだけで営業を行う。
- ライフネット生命は従来の保険会社が抱える膨大な人的コストを節約できる。従来の生命保険は、オンラインを重視したところで、セールスレディの人件費がなくなるわけではなく、チャネル間の営業成績の食い合い(カニバリズム)が発生してしまうため、今もセールスレディによる人的営業を重視している。
- ライフネット生命は、オンラインでの保険販売を成立させるため、口頭での詳細説明が要らなくなるよう特約をほとんど廃止し、ごくシンプルな保険を売り出している。一方、従来の保険会社は、ライフネット生命が廃止した特約こそが利益の源泉なので、ここを廃止するわけにはいかない。難しい特約を色々つけることで、様々なリスクをヘッジしたり、顧客からプラスアルファの利益を得ているからである。
- 更にライフネット生命は保険販売にかかるコストの内訳を顧客に開示しているが、これも従来の生命保険は開示することが難しい。これを開示するとセールスレディの人件費の高さが凄すぎて、印象が良くないから。
……と、良いことづくめのように思えるが、ここまで大手企業の強みを鮮やかに弱みへと転換できる戦略は、そうそうあるわけではないだろう。
最後の「協調戦略」は、大手のバリューチェーンの一角に入り込んだり、また自社のバリューチェーンに大手のビジネスを引き込んだりして、共生を図っていく戦略である。最も典型的でわかりやすいのは、大手企業の戦略商品を作るプロセスにおいて必要な部品を受注することだ。