鈴置高史『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』

「中国の尻馬」にしがみつく韓国

「中国の尻馬」にしがみつく韓国

日経ビジネスオンライン上に「早読み 深読み 朝鮮半島」のタイトルで連載した記事に加筆・修正して構成した、韓国の「離米追中」を描いたシリーズの第7冊目。やっと最新刊に追いついた。わたしは以前より地政学に興味があったのだが、東アジアの情勢を冷徹に分析する本書こそ地政学の最も優れた実践書のひとつであろう。

平和ボケした日本ではどうもピンと来ないが、南シナ海をめぐる米中対立は相当に先鋭化している。アメリカは韓国に対して最後の「踏み絵」を迫ったが、韓国は例によって中国の言いなりになり、その「踏み絵」を無視した。中国ほど怖くないアメリカに対してはまだ甘えられる、なぜなら自分たちは地政学的に重要な国だからだ……というのが韓国の希望的観測である。しかし実際には韓国の「離米追中」はいよいよ分水嶺を越えてしまい、アメリカ側に戻る最後の機会を逸した、というのが著者の見立てである。韓国はこの後もできるだけお得意の二股外向を続けながらアメリカと中国の双方のご機嫌を取ろうとするも、そもそもアメリからから信頼を失ってしまい、戻るところがなくなっている……そういう構図になっている。

そうした状況を受けて、韓国の核武装のシナリオは非常に現実味を増している。そもそも中国からは属国扱いされて、アメリカからは信頼を失い、そしてアメリカにも韓国にも現状、北朝鮮の核武装を止める手立てがない……という厳しい現実があるからだ。日本も遠からず核武装について議論せざるを得ない時代が来るだろう。中国とロシアは既に核武装しており、北朝鮮が核武装し、韓国も核武装し、中国からの侵攻を止めるべく台湾も核武装し、そしてアメリカも同盟国やグアム・サイパン等を守るため核を持ち込む……ほとんど一触即発ではないか。そもそも東アジアは中国・ロシア・韓国・北朝鮮と問題児が揃い踏みしている上に、韓国と北朝鮮は情緒的に不安定でいつ癇癪を起こして核を使うかわからない。これは「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれたバルカン半島、「中東の火薬庫」と呼ばれた旧パレスチナ周辺に匹敵する火薬庫ぶりだ。あまり面白くない未来になりそうだ。
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