藤田勉『グローバル金融規制入門』

グローバル金融規制入門

グローバル金融規制入門

冒頭でいきなり「入門と書いているが入門書ではない」的な言及があって嫌な予感がしたのだが、確かにグローバル金融規制の入門書としてはちょっと使えないと思った。グローバル金融規制の入門書としての要件は何だろうと考えてみたが、要するに以下の3点ではないだろうか。

  1. (各国規制ではなく)グローバル金融規制全体、あるいは特定のグローバル金融規制が必要になった背景の解説
  2. どんなグローバル金融規制があってそれはどのような内容であるかの解説
  3. 当該グローバル金融規制に対して要するにどんな対応が必要なのかの解説

本書は、1点目はまあ導入部分として一応書かれているのだが、2点目と3点目が正直あまり満足できなかった。そもそもグローバル金融規制が網羅的に書かれていないように思うし、バーゼルIIIとIFRSは他に入門書や実務書がたくさんある。また、著者は実務家でありながら経営法の研究者でもあるようで、シビルロー・コモンローとか、成文法・不文法といった法律の概念が多く出てくる。しかしこの手の本の読み手にとって正直それはどうでも良いのではないかと思った。もちろん教養としては価値がある。しかし金融規制内容と対応策をセットでコンパクトに知りたいというのが読み手の願いなのに、解説そのものがシビルローやコモンローといった法律論的な話をベースになされているので、あまり頭に入ってこない。

要するにタイトルと内容がマッチしていないのである。正直わたしには難しい内容であったが、昨今の金融機関に対するアメリカの厳罰化など、経営者や金融マンが教養書として読んで、大きな視点を持つのには良い本だと思う。

なお、タイトルは、『グローバル金融規制原論』とかならまだ近いかもしれない。