薬袋善郎『英語リーディングの奥義』

英語リーディングの奥義

英語リーディングの奥義

  • 作者:薬袋 善郎
  • 発売日: 2019/04/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
著者は、品詞分解によって英語構文を判断する英文解釈のメソッドを作った人らしい。F.o.R. / Frame of Referenceという名称だが、単に薬袋式とか薬袋メソッドと呼ばれたりもするらしい。

「らしい」というのは、実のところ、あんまりわかっていないからだ。先日Amazonで『英語リーディングの極意 10の原則で読み解く』という本が出てきて「極意か、しかも原則は10で良いのか」と購入したのだが、その時に本書もよく似たタイトルとして引っかかってきた。わたしとしては「奥義か」とこれまたあっさり購入した次第。

読んでみると、要するに、学校文法を下敷きにしつつ、上級者の頭の働きを合理的にメソッド化したのがこのF.o.R.ということになるようだ。だが、品詞分解や返り読みは今時あまり流行らない。だからF.o.R.に対する批判も多いようで、その批判に対する反論を載せるとともに、どうすればF.o.R.を身につけることができるかを書いたのが本書ということになるだろう。

本書を読んで理解したのは、まずF.o.R.の解説はいくつかの書籍や音声教材・映像教材で提供されているが、著者としては『英語リーディング教本(リー教と呼ばれたりもするらしい)』が使いこなすという点では最もおすすめできるそうで、使いこなすためには『英語リーディング教本 ドリル』も使うとなお良いとのこと。また名詞・動詞・形容詞・副詞といった品詞の基礎もわからない人間は『英語ベーシック教本』が良いそうだ。調べたら、リー教はかなり有名な英語解釈本らしい。

次に、品詞分解や返り読みなんてネイティブはやっていないからリアルじゃないという批判に対しては、著者はわりかし柔軟というか、要するに品詞分解や返り読みが要らない境地に達するために、品詞分解や返り読みが合う人は一度しっかりやっておこうという考えである。すなわち、当初は品詞分解や返り読みをしっかりやらせるけれども、いちいち全ての英文の品詞分解をして返り読みをするのは大変なので、だんだん慣れてくると品詞分解や返り読みを意識せずとも読むようになるし、それで実際正しく読めるようになる。しかし品詞分解をきちんと理解しないまま読解スピードを上げても、基本ができていないので、結局どこかで頭打ちになる……と、そういう考えのようである。これを聞いてわたしがイメージしたのは「漢文」である。漢文は、中学や高校の間は、レ点や一二点をつけて、読み下す。しかし中国人ネイティブは当然そんなことをしていないし、きちんと勉強すると日本人であってもレ点や一二点を入れなくても自然に読めるようになってくる。

また、品詞分解や返り読みというと、どうも鉛筆舐め舐めじっくり英文に取り組むというイメージがあるが、著者はとにかく反射的に英文を理解できることを要求している。英文の構造を「即座に」「淀みなく」答えることが必要だそうだ。また、あまりマニアックな文法事項を調べようという姿勢も明確に否定している。つまりF.o.R.は研究肌の人が鉛筆舐め舐めやっていくものではなく、型を覚えて自動化し、いつしかその型を実践していることすら意識しなくなり乗り越えていくべきメソッドなのだと理解した。

個人的には、なるほど、と気になる点が多い。やってみるかな。