カート・アンダーセン『ファンタジーランド』上巻

ファンタジーランド(上): 狂気と幻想のアメリカ500年史

ファンタジーランド(上): 狂気と幻想のアメリカ500年史

アメリカは不思議な国だ。最も進んだ国である一方、最も非合理的で、最もカルトがはびこり、最もガン・クレイジーな国だ。それもそのはず、アメリカは神に取り憑かれた異端者や、黄金に取り憑かれて大西洋を渡った人たちが作った国であり、その子孫は幻想に満ちた500年のアメリカ史を作り上げた……というのが本書のアウトラインだろうか。

ファンタジーランドとは言い得て妙。

そもそも現代ですら、アメリカ人の3分の1は「聖書は神の語った言葉で、一言一句、書かれたとおり理解されねばならない」というのを、レトリックではなく本気で思っている国民である。シリコンバレーだの何だのはアメリカの数ある側面のひとつでしかない。

著者はアメリカを度々「幻想・産業複合体」という言い方をしている。彼らのファンタジーな頭の中が、あらゆるビジネスと結びつき、ファンタジーが事実であるかのように語られる。その代表格がディズニーランドであり、カジノであり、映画であり、銃社会である。そしてそうした狂乱の500年のひとつの結実が、ドナルド・トランプ大統領の誕生というわけだ。トランプは度々、「自分は不動産業にショービジネスを持ち込むんだ。そして不動産業とショービジネスの双方で成功するんだ」的なことを語っていたそうだ。彼は事実、その双方で成功して、さらには大統領の座も勝ち取った。

ちょっと長い(長すぎる)が、内容は文句なしに面白い。