横田増生『ユニクロ潜入一年』

ユニクロ潜入一年

ユニクロ潜入一年

ユニクロは安くて良いものを売ってくれていると思うが、その反面、ユニクロの現場は「マニュアル最優先で現場の声は無視」「コスト削減のため海外工場の労働環境は劣悪」「仕事量に対して時給が安いため外国人ばかりが集まり、コミュニケーションミスが多発」「シフトが勝手に組まれるため辞めたくても辞められない」と、とにかく酷い物言いである。

これがどこまで本当かわたしに確認する術はないのだが、率直に言って、この手の話は多かれ少なかれ存在するとわたしは思う。安いのには、安いなりの理由がある。安くて品質も良いなら、その分、誰かが割を食っているはずなのだ。ユニクロにおいてはそれが従業員や海外下請け工場・原材料メーカーなのだ、というのが著者の主張である。この著者は以前にも『ユニクロ帝国の光と影』『アマゾン・ドット・コムの光と影』『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』といった本を書いており、要するにローコスト・オペレーションでバリューを出す企業は嫌いなんだろう。こういう発想は世の中に一定数あるので、その心情はわかるような気もする。

ただし、マフィアが奴隷同然に買ってきた子供をコーヒー農園で強制的に働かせる……というのとは、ユニクロは根本的に違う。わたしは本書を読んだ後も、ユニクロの商品を買うし、Amazonを利用するだろう。