小茂鳥雅史+梅澤翔『スパルタ英会話』

スパルタ英会話 挫折せずに結果を出せる最速学習メソッド

スパルタ英会話 挫折せずに結果を出せる最速学習メソッド

  • 作者:小茂鳥 雅史,梅澤 翔
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2019/11/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

英会話スクール黎明期(フェーズ1)

個人的には今、空前の「英語サービスブーム」だと思う。

わたしは1978年生まれなので1980年代の確たる記憶はないが、元々1990年代から2000年代にかけて、NOVA・ECC・イーオン・GABAといった日本人にとって「ごく普通」の英会話スクールがどこの駅にも幅を利かせていた。これを仮にフェーズ1と名付けるが、わたしはフェーズ1が良いものだったかどうか正直よくわからない。この頃は英語学習に興味がなく、また使う必要性もゼロだったので、自分は英語が苦手だという意識すらなかった。しかしあれだけのスクールがあった割に、英語のできる人材の数が目に見えて増えていないというのは、まあ「推して知るべし」ということなのだと思う。

これらごく普通の……すなわち業者的には色々と工夫しているのかもしれないが我々ユーザー的には特段の工夫のない一般的なグループレッスン主体の英会話スクールの問題点とは、いったい何だったのだろう。複数あると思うが、少なくとも運営サイドは「1回あたりの授業料が高すぎる」「通うのが面倒」「特にグループレッスンは非効率、英語の出来ない日本人の英会話を聴いてどうするの」の3点だと判断したようだ。

スカイプ英会話(フェーズ2)

それらの課題に対応すべく生まれたのが、1回500円だの1000円だので外国人とチャットができる、いわゆる「スカイプ英会話」だ。これまでのグループレッスン主体の英会話スクールをフェーズ1、これをフェーズ2とわたしの方で勝手に名付けるが、このビジネスチャンスは間違っていなかったと思う。一時期ほどのブームは去ったかもしれないが、今でもレアジョブだのDMM英会話だの有力サービスは残っているし、周囲にも利用している人はいる。

しかし、我々のような英語難民にはスカイプ英会話も理想的なソリューションではなかったようで、英語難民の数は減っていない。何の問題があったのだろう。複数あると思うが、少なくとも運営サイドは「長期的にダラダラやるのでは英語学習者のモチベが続かない」「そもそも英会話をこなせるだけの英語基礎力がついていない」の2点を課題認識したのだとわたしは考えている。

フィリピンへの短期語学留学(フェーズ3)

それらの課題に対応すべく生まれたのが、フィリピンのセブ島などで展開されている、短期間での英語留学というか英語学習支援サービスだ。これをフェーズ3と名付けるが、長期的な学習では英語学習者のモチベが続かないのであれば、どこかに缶詰めにして短期的に英語の勉強をやらせるしかない。しかし日本の施設だと日本語が溢れていて缶詰め効果が薄いし、人件費や物価が高すぎる。また、英語圏だと缶詰め効果は高いが物価と人件費の問題を解消できない。そこで非英語圏ではあるが英語が公用語として広く使われているフィリピンが一躍スポットライトを浴びることになった。フィリピンの大卒は基本的に英語が話せるし、日本から近く渡航費用も安いし、物価や人件費も安い。これらのサービスはいずれも、レッスンだけでなく、自習時間を重要視している。

多少極端に書くが、基本的な構造はこうだ。良く言えば英語学習に特化した、悪く言えば周囲に何もない不便で安いフィリピンの僻地に、衣食住の揃った宿泊施設と勉強部屋を準備する。そして1日3時間のレッスンも提供する。そして英語難民は、レッスンその予習復習と基本文法や基本単語の詰め込み、TOEICの学習教材などで1日10時間自習する。大変だが、1ヶ月とか3ヶ月の短期だから何とかやり切ってくださいと。そもそも施設の周囲には何もなく、他に何もすることがないわけで、英語13時間、朝昼晩のご飯と風呂で2時間、そうすると1日9時間も休みながら、3ヶ月だと13時間×90日で1170時間も勉強できるでしょうと。

実はわたしは、「このサービスええやん!」と本気で思っているのだが、仕事を1ヶ月から3ヶ月休んで行けるほどの裁量は現状持ち合わせていない。学生や、仕事を辞めてしまった若手社会人なら良いだろうが、ごく一般の社会人のニーズを満たすことは難しい。

学習指導やコーチングに注力(フェーズ4)

そこで生まれたのが、最近いくつも生まれている英語サービスである。これらをフェーズ4と名付けるが、本書も原則ここに該当する。

フェーズ4のサービスは、フェーズ1〜3で提供されていたサービスのメリット・デメリットを研究し尽くして生まれているサービスだと思う。フェーズ1〜3で得られた知見とは何か。それは「日本の英語教育が良いか悪いかは置いといて、そもそも日本人は英語トレーニングが圧倒的に不足している」という事実である。それを、アウトプット(喋る練習)の不足だと捉えれば、本書(スパルタ英会話)のような説明の仕方になるし、インプット(基礎文法や基礎単語を使いこなせるまで内面化する練習)の不足だと捉えれば、イングリッシュカンパニーやトライブのような説明の仕方になる。もうひとつ、英語の学習メソッドや学習教材は、既に日本にはかなり良いものが揃っている。だから、良いメソッド・良い教材・継続する仕組みがあれば、英語力は伸びると。逆に言うと、英語スクールでの学習時間だけでは英語力は伸びず、自宅での英語学習が必須である。それを踏まえ、運営サイドは1日3時間だの1年1000時間だのといった学習ハードルを設け、先生だけでなくコーチの役割も担い、あの手この手で叱咤激励して、何とか英語の勉強をやらせしめる、とこういう構造がフェーズ4の基本的なモデルである。

繰り返すが、本書も基本的には同じだ。

もちろん、本書ならではのユニークなアプローチもあるんだけどね。例えば、日本人同士の英会話というのは従来「無意味だろ」と言われてきたものだが、今時、非ネイティブの英語話者の方が多いのだから、英語で話すというメリットの方がデカいと再定義し、日本人同士のグループレッスンを肯定的に捉えている。