今野敏『去就 隠蔽捜査6』

去就―隠蔽捜査6―(新潮文庫)

去就―隠蔽捜査6―(新潮文庫)

個人的に今ハマっている隠蔽捜査シリーズの第6弾。

第6弾のモチーフは「ストーカー犯罪」であろうか。近年はストーカー犯罪が社会的に認知され、また問題視されている。だがストーカーと言っても千差万別で、なかなか対応は難しいと思う。本作では、略取・誘拐事案が発生するのだが、その被害者は、大森署のストーカー相談窓口でストーカー相談に来ていたというダブルパンチの設定である。ワイドショーのコメンテーターやニュースの女子アナが絶対「何とかならなかったのでしょうか」とお決まりのコメントをするアレである。ストーカー犯罪は本当に難しいなと思う。

補足

続きモノなので以前に書いた本シリーズの紹介を、初見の方のために再掲しておく。

本作はいわゆる警察小説である。なので事件が発生して解決する推理ドラマと、警察組織の中でのドラマ、そして主人公の家庭内ドラマ、この3つのドラマが基本的に平行して走ることになる(最初の2つだけのこともある)。しかし本作は他の多くの警察小説と異なる点があり、主人公は警察官と言っても現場の刑事ではなく、キャリアである。警察官僚とも呼ばれる上層部のエリートなのである。さて、ここからはネタバレを含むので簡単に書くが、主人公は元々キャリアであることに大きな誇りと使命感を抱いており、順調に出世もしてきた。だが、自身の信条である「原理原則」にこだわった結果、1巻のラストで大森署の署長という降格人事を受けてしまう。しかし主人公は、独自のキャリア信条に忠実に、たとえ降格されても公のために働き続けるという選択をし、降格人事を受け入れる(通常は皆この時点で辞める)。そして降格先の大森署で、辣腕を振るい始めるのである。