今野敏『自覚 隠蔽捜査5.5』

自覚―隠蔽捜査5.5―(新潮文庫)

自覚―隠蔽捜査5.5―(新潮文庫)

個人的に今ハマっている隠蔽捜査シリーズの短編集、第2弾。

短篇集第1弾は、主人公(竜崎)の幼馴染であり相棒的存在でもある伊丹を主人公としていた。この第2弾では、大森署署長である主人公(竜崎)を補佐する所轄幹部達が主人公である。

長編を7作も読んでいると、こうした脇役もわたしの中でかなりキャラが立っているので、読んでいて非常に面白い。ああ、このキャラだとこんな感じに考えるねとか、こんな風に主人公に振り回されるよねとか、新鮮な驚きはないものの安定して楽しめる。

補足

続きモノなので以前に書いた本シリーズの紹介を、初見の方のために再掲しておく。

本作はいわゆる警察小説である。なので事件が発生して解決する推理ドラマと、警察組織の中でのドラマ、そして主人公の家庭内ドラマ、この3つのドラマが基本的に平行して走ることになる(最初の2つだけのこともある)。しかし本作は他の多くの警察小説と異なる点があり、主人公は警察官と言っても現場の刑事ではなく、キャリアである。警察官僚とも呼ばれる上層部のエリートなのである。さて、ここからはネタバレを含むので簡単に書くが、主人公は元々キャリアであることに大きな誇りと使命感を抱いており、順調に出世もしてきた。だが、自身の信条である「原理原則」にこだわった結果、1巻のラストで大森署の署長という降格人事を受けてしまう。しかし主人公は、独自のキャリア信条に忠実に、たとえ降格されても公のために働き続けるという選択をし、降格人事を受け入れる(通常は皆この時点で辞める)。そして降格先の大森署で、辣腕を振るい始めるのである。