すばる舎編集部『ミニマリストな暮らし方』

人気インスタグラマー&ブロガー21名の、文字通り「ミニマリストな暮らし方」を浅く広く紹介した本。

個人的に関心を持ってこの手の本は幾つか読んできたが、本書で打ち止めにしようと思う。

「どのミニマリスト本も大して変わらない」からだ。

これはミニマリストそのものがInstagramやTwitterで過剰に脚光を浴びているだけで大したノウハウがないという点もあるだろうし、ミニマリストをチヤホヤする出版社側が上手く違いを示せていないという面もあるだろう。いずれにせよ、ミニマリストと呼ばれる人種が使っているノウハウは実にシンプルで代わり映えしない。わたしが見る限り、以下の2つに集約されていると思う。なお、何だか以前も似たようなことを書いた気がするが、検索できなかったので改めて書くことにした。少しブラッシュアップされていると思う。

  1. モノの「総量」を減らす
  2. モノの「バリエーション(色味・サイズ・用途別)」を減らす

モノの「総量」を減らすというのは当たり前すぎて追加解説することがないので、2点目の「バリエーション」についてだけ話すが、ここの塩梅や徹底度がミニマリストとしての特徴を決定づけていると思う。

例えば、家具の色を統一したり、調味料を同じ規格の調味料に詰め替えたり、100円ショップの箱や無印良品のケースを活用したりと、見た目の様式を揃えることで「整っている感」を出すケースがある。特に調味料ボトルを詰め替える話は、もう耳にタコ感というか。いわゆる「インスタ映え」するのは同意するが、わたしは詰め替えるメリットをほとんど感じないな。衛生上のリスクも上がるし、最初から小さいものを買って、周囲のラベルをはかせば良いと思う。

いわゆる「私服の制服化」も結局はこれに似た話だと思う。わたしも5年ぐらい前までは、何も考えずにグレー、ネイビー、ブラック……と適当に違う色の下着や靴下を買っていたが、例えば靴下を全て同じものにするだけで、靴下の組み合わせを探す手間が省ける。同様に、下着だけでなく服自体のバリエーションを減らして、今日はどれにしようかなと悩む時間を減らす……と、まあこういう話である。これはわたしのような人間には合っているが、これを悩むこと自体がファッションの楽しさという気もするので、万人に薦めるべきものかと問われると、違う気もする。

もうひとつ、用途別アイテムを断舎離して汎用アイテムに揃えていくのもミニマリストの十八番だが、これもバリエーション削減の一環と言って良いだろう。家中すべての洗剤を「オキシクリーン」と「消毒用アルコール」に特化させるのは耳にタコだが、電気ケトルを断舎離して鍋で湯を沸かすといったアイデアもよくある。しかしこれも過ぎたるは及ばざるが如しというか、炊飯器を断舎離して土鍋で炊飯するとか、電子レンジを断舎離して蒸し器で解凍するとか、あなたたち暇なんですねとしか思わない。どのミニマリストだったか忘れたが、洗濯機を断舎離して洗濯板で衣服を洗うとか言っている人までいて、正直笑ってしまった。逆だろう! 洗濯機を自動洗濯乾燥機にして、タスクそのものを最小化していくのが筋というものだ。

こういう話を聞くと、手段が目的化しているなーと思う。シンプルで生活しやすい空間を作るのがミニマリストの出発点だったはずが、なぜか便利なモノを手放して19世紀のように土鍋で米を炊き、洗濯板で衣類をこすっているのである。茶番としては面白いし、本人が好きでやっているものを止めるつもりも毛頭ないが、わたしが真似したいと思う方向性ではない。

余談

もうひとつ、3. モノに「感謝」する というのもあったな。ミニマリストを突き詰めると、こんまりも断捨離の方も、八百万の神々への感謝で溢れるようになる。これも日本的と思えば面白いか。最近こんまりのアプローチがアメリカでもウケているしね。