菅浩江『不見の月 博物館惑星Ⅱ』

不見【みず】の月 博物館惑星2

不見【みず】の月 博物館惑星2

  • 作者:菅 浩江
  • 発売日: 2019/04/18
  • メディア: 単行本
タイトルは「不見みずの月」と読む。

博物館惑星Ⅱという副題がついているように、本書は『永遠の森 博物館惑星』という20回は読み返した極私的な大傑作SFの続編である。

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舞台は、地球の衛星軌道上に浮かぶアフロディーテと呼ばれる巨大な博物館。音楽・舞台・文芸担当のミューズ、絵画・工芸担当のアテナ、動植物担当のデメテルという各専門部署に分かれ、世界中の美術品や動植物が管理・展示されている。また学芸員たちは、女神の名を関したデータベース・コンピュータに頭脳を直接接続させ、収蔵品の分析鑑定・分類保存を通して美の追究に勤しんでいる……という設定である。前作『永遠の森 博物館惑星』の主人公(田代孝弘)はホワイトカラー的な立場からミューズ・アテナ・デメテルの垣根をまたぐ厄介な問題に対処しながら、否応なく「美とは何か」「感情とは何か」「感覚とは何か」「感動とは何か」といった深遠なるテーマに対峙していくことになった。一方、本作の主人公(兵藤健)は、新人警備員である。前作の主人公と同じく総合管轄部署のアポロンに所属しているのだが、何しろ若手だ。インタラクティブ・アートの展示管理や、強欲な画商にまつわる事件など、やや現場寄りの立場で問題に立ち向かっている。

いやもう、まさか続編が出るとは思っていなかった。

感動です。

めちゃくちゃ面白い。

しかも、本作の主人公(兵藤健)は父親との間に根深い問題を抱えており、それが解決していない。どうやらさらに続編があるようだ。

控え目に書いても最高だ。