坪谷邦生『人材マネジメントの壺 テーマ7. 組織開発:人間を見ろ』

元リクルートマネジメントソリューションズの方。個人出版のような形でテーマ別の入門書を7冊も出しており、気になったので順次読んでいる。

最終巻となる第7巻のテーマは組織開発で、先日の人材開発以上に遠大なテーマだ。正直、ちょっと体系的ではないと思った。ビジョンやミッションの話、すなわち理念浸透の話と組織開発の話は必ずしも同じではないし、組織活性化のポイントはカオスの演出だ! というメッセージもリクルート流に過ぎず、普遍的なアプローチでは全然ないと思う。

第5章の「自律的なチームの作り方」という章だけは参考になった。著者は自律的なチームの作り方として、条件を4つ挙げている。

  1. チームのメンバー数を5〜7名にすること(対面小集団)
  2. メンバーがどのチームに所属しているか明確であること(集団規範)
  3. チームへの連帯感を高めること(集団凝集性)、そのために、チームがやろうとしていることが魅力的で、自分のやりたいことであり、安心できる仲間と共に進められること、チームが周囲から高い評価を受けていること」
  4. メンバーに任せて邪魔しないこと(自律性と自我関与)

3だけやたら長い(笑)

どうでも良いツッコミはさておき、この中で3は当然として、1はこの20年ぐらいで組織・人事の専門家がよく口にすることになったことだと認識している。直感的には、少人数チームにすると管理過剰になって自律と逆行するように思う人がいるかもしれない。しかし現実は逆だと思う。会社組織の中で働くには、あるいは大きな目標を達成するために働くには、色々な調整やしがらみが避けがたく発生する。そのような中でメンバーが自律性を維持して働くには、同じゴールを持ったチーム内で密にコミュニケーションを取り、お互いのR&R(ロール・アンド・レスポンシビリティ/役割と責任)について共通認識を持っていることが重要だと思う。また4の内容にも繋がるが、水槽の中で魚が気持ちよく泳ぐには、池の温度管理・水質管理・餌の管理が不可欠だし、水槽の管理者が泳ぎ方まで魚に教えるのはナンセンスだ。泳ぎ方は魚が一番よく知っているのだ。

でもこれが当てはまるのは、メンバーがプロフェッショナルであること(少なくとも能力的・精神的に未熟な人材ではないこと)、という5つ目の定義も必要だと思う。

自律的なチームに放り込まれた瞬間、能力的・精神的に未熟な人材が自律人材に変貌するというのは幻想だと思う。そうであれば、Googleは厳しい採用枠を設ける必要などないからだ。